研究課題/領域番号 |
18KK0258
|
研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
照沼 美穂 新潟大学, 医歯学系, 教授 (50615739)
|
研究分担者 |
岸川 咲吏 新潟大学, 研究推進機構, 特任助教 (50781358)
飯田 和泉 (渡辺和泉) 新潟大学, 医歯学系, 助教 (80751031)
|
研究期間 (年度) |
2018-10-09 – 2022-03-31
|
キーワード | アストロサイト / アルコール / アンモニア / アルツハイマー病 |
研究実績の概要 |
慢性的なアルコール摂取は肝機能障害により高アンモニア血症を発症させ、脳の恒常性維持に重要な細胞であるアストロサイトの機能破綻をもたらす。アストロサイトは毒性のあるアンモニアとグルタミン酸からグルタミンを産生して細胞外に放出し、さらには興奮性神経伝達物質であるグルタミン酸の脳内濃度を調節することで神経細胞を保護している重要な細胞である。研究代表者が高アンモニア血症を発症したマウスの脳を調べたところ、反応性アストロサイトの増加と、アルツハイマー病(AD)の原因因子であるアミロイド前駆体(APP)やアミロイドβ(Aβ)の増加が見られた。 この分子メカニズムを解明すべく、本年度はラットの胎児から調整した培養アストロサイトを用いて、アンモニア刺激後のAD関連因子やグルタミン酸代謝酵素であるグルタミン合成酵素(GS)の発現を解析を遺伝子レベル、タンパク質レベルで行った。またアストロサイトには脳内のアンモニアとグルタミン酸の代謝に寄与するほかに、脳に溜ったAβを除去する機能もあることから、Aβの貪食能、産生能、排出能についてもサンドイッチELISA法を用いて検討を行った。加えてマイクロアレイ法により、アンモニアがアストロサイトにもたらす変化を網羅的に解析し、いくつか候補分子を見出した。これらの研究により、初年度は培養アストロサイトに研究を絞って、アンモニアが与えるアストロサイトへの影響について明らかにすることを目指した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ラットの胎児から調整した培養アストロサイトにアンモニア刺激、またはアンモニア刺激とともにグルタミン酸刺激を加えたところ、グルタミン合成酵素(GS)の発現は著明に減少した。一方、細胞内のAβやAPPの蓄積は増加していた。アンモニアにはリソソーム内のpHを変化させて分解酵素の働きを弱める働きがあることから、現在その経路について検討をしている。また、APPの発現増加についても合成経路には異常がなかったことから、APPの分解経路に異常があるとして、検討を続けている。
|
今後の研究の推進方策 |
慢性的にアルコールを摂取させたマウスの脳におけるGSとAD関連因子の発現を調べるほか、神経伝達効率や認知機能を検討し、APPの発現増加やAβの蓄積のメカニズムの解明に向けた研究を継続する。中でも慢性的にアルコールを摂取させたマウスの健康状態をきちんと把握することで、体内のアンモニア濃度と認知機能変化との相関を明らかにすることを目指す。これらが明らかになることで、その後、GSの発現減少とアストロサイトの機能障害や認知機能障害との関連性についての検討を行う研究につながっていく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度は研究分担者の国際共同研究者の元への派遣を行わなかったため。次年度以降にこの分は渡航費用として計上する。
|