研究課題/領域番号 |
18KK0259
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
吉田 篤 大阪大学, 歯学研究科, 教授 (90201855)
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研究分担者 |
古田 貴寛 大阪大学, 歯学研究科, 講師 (60314184)
佐藤 文彦 大阪大学, 歯学研究科, 助教 (60632130)
村上 旬平 大阪大学, 歯学部附属病院, 講師 (70362689)
大原 春香 大阪大学, 歯学部附属病院, 医員 (40754726)
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研究期間 (年度) |
2018-10-09 – 2022-03-31
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キーワード | シナプス / 神経回路 / 筋感覚 / スプリント / 脳 |
研究実績の概要 |
2018年度には、閉口筋筋紡錘感覚が特異的に入力する顆粒性島皮質の吻尾的中央レベルに投射するニューロンであり、かつ、咬筋筋紡錘感覚が入力する三叉神経上核から投射する軸索終末とコンタクトするニューロンを光学顕微鏡下で、視床後内側腹側核尾腹内側縁に見つけた。この結果を受け、このコンタクトが形成するシナプスを電子顕微鏡で観察し、閉口筋筋紡錘感覚がこの経路で伝達されていることとその神経機構の解明のため、韓国慶北大学のBae教授の所に、2018年の1月と2019年の9月に我々が赴き共同研究を開始した。 しかし本格的な共同研究の開始直前の2020年1月から(現在も)、コロナウィルス禍のため慶北大学を訪問できなくなり、研究視点の転換を余儀なくされた。トゥレット症候群(TS)は、視床の後腹側核よりも髄板内核群の正中中心核の脳深部刺激治療が奏功するとの報告は、閉口筋筋紡錘感覚が視床の髄板内核群にも伝達される可能性を示すことに着目し、これを確かめる研究にシフトすることにした。2019年から2020年度前半の研究で、閉口筋筋紡錘感覚が視床の髄板内核群の中心傍核の尾側レベルの腹外側部に存在するoval paracentral nucleus(OPC)に投射することが見つかった。さらに、頸部と上肢の筋の筋紡錘感覚が延髄の外側楔状束核から視床の後腹側外側核の腹内側部(VPLvm)には投射するが、髄板内核群には投射しないことが明らかになり、OPCへの投射は、頭部筋の筋紡錘感覚の特異性を示すことが明らかになった。その後、2020年度後半には、OPCが大脳皮質の感覚領野と顆粒性島皮質に投射することが解明でき、OPCを経由する皮質投射もTSの症状が歯科スプリント装着後の咬合で軽減することに関与している高い可能性を示すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
トゥレット症候群(TS)の症状が歯科スプリント装着後の咬合で軽減するのは、歯科スプリントの装着で咬合高径が上がった状態での咬合によって著しく賦活する閉口筋筋紡錘感覚が上位脳に伝達されるために生ずる、との我々の仮説を支持するデータの獲得が本研究の最終目標である。本研究の申請では、光学顕微鏡下で見つかった、閉口筋筋紡錘感覚が視床経由で大脳皮質に投射する経路が、実際に情報伝達していることを証明し、かつ、そのシナプスにおける情報伝達機構を解明することを目指した。そこで、シナプスの電子顕微鏡観察の世界的リーダーである韓国慶北大学のBae教授の所に我々が行き、Bae教授研究室の最新機器を使用して共同で研究する予定であった。その準備のため、2018年の1月と2019年の9月に我々が慶北大学に赴いた。しかし、コロナウィルス禍のため、2020年1月以後は、研究のために我々が慶北大学を訪問できなくなってしまった。よって当初の視点からの研究は遅れてしまっている。慶北大学を訪問可能になり次第、共同研究を再開したいので、2020年度終了予定であった本研究を2021年度まで延長することにした。当初の研究内容での2021年度内の研究の成就は、コロナウィルス禍が日本と韓国の両方で終息するかどうかにかかっている。
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今後の研究の推進方策 |
トゥレット症候群(TS)の症状が歯科スプリント装着後の咬合で軽減するのは、歯科スプリントの装着で咬合高径が上がった状態での咬合によって著しく賦活する閉口筋筋紡錘感覚が上位脳に伝達されるために生ずる、との我々の仮説を支持するデータの獲得が本研究の最終目標である。コロナウィルス禍のため、2020年1月以後は、本研究のために我々が慶北大学を訪問できなくなってしまった。よって当初の計画であった、光学顕微鏡下で見つかった閉口筋筋紡錘感覚が視床経由で大脳皮質に投射する経路が実際に情報伝達していることを、電子顕微鏡を用いて観察する研究は遅れてしまっている。 慶北大学を訪問可能になり次第、この視点での研究を再開するつもりであったが、コロナウィルス禍の終息時期が予測できなかった(早期の終息は期待できない状況であった)ので、2020年度から、本申請研究の目標である、TS治療に閉口筋筋紡錘感覚の上位脳への伝達が関与することの解明を、異なる視点から、異なる手法を用いて解明する試みに変更し、これを開始した。その結果、「研究実績の概要」に記した研究業績を得た。 慶北大学を訪問可能になり次第、当初の計画通りの共同研究を再開するため、また視点を変えて2020年度から行ってきた研究を完成させるために、2020年度末で終了予定であった本研究を2021年度まで延長することにした。2021年4月現在、残念ながら2021年度もコロナウィルス禍が継続し、我々が慶北大学を訪問できない可能性が高くなってきた。2020年度から行ってきた新しい視点からの研究を2021年度も継続し、本申請研究の当初の目的の完遂を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
「現在までの進捗状況」と「今後の研究の推進方策」にも記したように、コロナウィルス禍のため、2020年1月以後は、本研究のために我々が慶北大学を訪問できなくなってしまい、当初の視点での研究は遅れてしまった。しかし、慶北大学を訪問可能になり次第この視点での研究を再開するつもりなので、2020年度末で終了予定であった本研究を2021年度まで延長することにした。関わる経費も2021年度までの使用に後回しにした。さらに、コロナウィルス禍のために慶北大学のBae教授との共同研究を中止せざるを得ない可能性への対応として、新たに2020年度から開始した研究を完遂させるためには、2021年度末まで研究を継続する必要があるので、経費も2021年度末までの使用に変更した。
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