研究課題/領域番号 |
18KK0266
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
山岡 吉生 大分大学, 医学部, 教授 (00544248)
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研究分担者 |
松本 昂 大分大学, 医学部, 特任助教 (50609667)
矢原 耕史 国立感染症研究所, 薬剤耐性研究センター, 主任研究官 (70542356)
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研究期間 (年度) |
2018-10-09 – 2022-03-31
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キーワード | ヘリコバクター・ピロリ / 国際共同研究 / 薬剤耐性 / 病原性 / テーラーメイド |
研究実績の概要 |
発展途上国では、ピロリ菌感染者すべてに除菌療法を行う経済力もなければ十分な内視鏡設備や内視鏡医も存在しない。ピロリ菌培養ができる施設も稀で、効果的な除菌療法も存在しない。そこで本事業では、アジアの発展途上国で胃癌多発国であるモンゴル、ブータン、ベトナムに焦点を当て、現地共同研究者と共同で、除菌を行うべき人および除菌法の選択に有用な未知の病原因子および薬剤耐性関連遺伝子の変異・多型の検索を、次世代シーケンサーを用いた菌側のゲノムワイド関連解析(GWAS)によって行う。最終的には、携帯型で安価な新規遺伝子解読技術(ナノポア:MinION)による、従来の内視鏡検査および細菌培養を必要としない迅速かつ非侵襲な病原因子および薬剤耐性関連遺伝子検出方法の開発に取り組む。2018年度は、アジアの発展途上国で胃癌多発国であるモンゴル、ブータン、ベトナムにて得られているピロリ菌を用いて、実際にナノポアによる解析を行った。ナノポアに関しては、初期条件の設定をほぼ完了し、現在、既知のPacBioなどの次世代(次々世代)シーケンサーで解析した結果とどの程度マッチしているかの検討を行っている。2018年度は、別資金にてブータンに出向き、本プロジェクトに関しても、相手側の研究者との打ち合わせを行うことができた。また、周辺諸国との関連性を見ることも重要であり、南アジアに位置するインドおよびスリランカを訪問、インドでは本プロジェクトの説明、スリランカでは以前より共同研究を続けており、スリランカの研究者が集めてくれた胃粘膜検体の解析も開始した。興味深いことに、スリランカではピロリ菌感染率が5%にも満たず、ブータンとの比較対象として興味深い国であることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
すでに、携帯型で安価な新規遺伝子解読技術(ナノポア:MinION)の初期設定を終え、実際にピロリ菌を用いた遺伝子解析を始めている。モンゴルからは、今までに2名の大学院生がピロリ菌研究を行い、1名はこの3月に卒業したが、卒業式で、大分大学の学生表彰(最優秀卒業生)を受け、現在はモンゴルにて我々との研究の橋渡しを行っている。また、ベトナムからも、現在2名の大学院生がピロリ菌研究を行っており、ベトナムの共同研究者は今年、ベトナム政府からの大型研究費も獲得して、我々との共同研究もより密接なものとなることが確定している。また、ブータンの共同研究者は、昨年暮れに、ブータン国首相に選出され、政府を巻き込んだ共同研究体制も確立しつつある。また、3カ国のみならず、比較対象としても近隣国との共同研究も進んでおり、今後、より研究が進むと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、ナノポアでの解析精度を如何にすればあげられるかの検討を行い、実際に、薬剤耐性や病原因子にかかわる遺伝子変異を測定できる系を確立したい。また、モンゴル、ブータン、ベトナム実地での共同疫学研究も開始して、データの蓄積を目指したい。特に、ブータンでは共同研究者が首相になったこともあり、現在ブータン政府とのかかわりも強くなっており、具体的な村を設定して、その村におけるピロリ菌感染率などを調査して、陽性者には内視鏡検査を行い、検体の採取、薬剤耐性の測定などを進める計画を立てているところである。さらに、前年度に引き続き、予算の範囲内で、近隣諸国でのデータ収集も行いたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
2018年度は、年度途中から事業が開始されたこともあり、研究の準備やメールなどを用いて相手国との打ち合わせをすることがほとんどで、大きな予算を使う必要がなく、来年度に回すことが可能であった。またナノポアにおける解析もナノポア機器自体は、他研究費ですでに購入していたために、新たな予算を用いる必要がなかった。しかし、2019年度からは、実際に現地での共同研究が本格化することから、前年度からの繰り越しおよび新たな今年度の予算を合わせた資金での運用が必要と考える。
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