研究課題/領域番号 |
18KK0277
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
宮永 喜一 北海道大学, 情報科学研究院, 教授 (20166185)
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研究分担者 |
山本 学 北海道大学, 情報科学研究院, 准教授 (20301939)
日景 隆 北海道大学, 情報科学研究院, 助教 (30312391)
ShariatiMoghadam Negin 北海道大学, 国際連携研究教育局, 講師 (80830116)
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研究期間 (年度) |
2019-02-07 – 2021-03-31
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キーワード | マルチメディアIoT / エネルギーハーベスト / 自律無線ネットワーク / ソフトウエア・ハードウエア協調設計 / 低消費電力技術 / 無線通信ネットワーク / ディジタル信号処理 / 回路とシステム |
研究実績の概要 |
本研究では,マルチメディアIoTネットワークの提案・設計・開発を目的としている。特徴は,無線通信方式において,安定な通信のため,自律的に制御しながら通信性能を最適化するコグニティブ方式を採用。すべてを低消費電力アーキテクチャにより設計し,少ない電力消費で,様々な仕様のシステムを動的に実現する極低消費電力型無線通信システムの実現。さらには,ナチュラルエネルギーハーベスティングに基づくシステム動作を実現することである。 2019年度は,本研究事業の2年目である。2019年度も継続して,上記の各方式の設計・開発・実現およびフィールド実験を行った。主な実験フィールドは,シドニー工科大学(UTS,シドニー,オーストラリア)であるため,Xiaojing Huang教授を中心としたUTS研究チームと,北大側のチームとの共同研究打ち合わせや,共同実験・評価などを実施した。 本研究での主な研究項目は,以下の3点であり,各々の研究実績概要は次の通り。 (1) 調和型無線通信ネットワークの研究:2019年度では,引き続き高効率な耐干渉・耐雑音通信を融合した無線D2MD用の調和型無線通信方式の設計・開発を行い,ネットワークシステム全体のスループット計算など,シミュレータの設計とネットワークプロトコルの策定を行った。 (2) 極低消費電力型高速無線通信システムの研究:(1)の方式に基づいた低消費電力指向の無線D2MDネットワークの設計を引き続き行った。調和型無線方式を実現するため,1×1から,8×8 までのチャネル通信を動的に変化できる新しいモジュールのFPGA設計を行った。 (3)低消費電力指向D2Dセキュア無線ネットワークの研究: エネルギーハーベスティングによる電力供給を仮定した,最適なRF回路モジュールの設計を行った。並行して,高セキュリティ通信のための通信モジュールの設計を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
共同研究先であるシドニー工科大学において,複数回の研究打合せを行い,フィールド実験を実施した。また,各大学において,設計開発したシミュレータによるシステムの性能評価なども実施している。シドニー工科大学の共同研究チームが実施した実験・評価の結果は,定期的にレポートとして,関係者に報告している。本共同研究の各研究項目については,当初の目的に沿った内容で,以下のように進んでいる。 (1) 調和型無線通信ネットワークの研究: 高効率な耐干渉・耐雑音通信を融合した無線D2MD用の調和型無線通信方式の設計およびシミュレータ開発が,北大において進められ,双方の大学で導入・実現を行った。 (2) 極低消費電力型高速無線通信システムの研究: 北大独自の極低消費電力化設計手法により,1~8通信チャネルまで考慮したMIMO-OFDMAシステムのFPGA実現を行った。本研究の目的である調和型システムに対応すべく,動的に仕様を変更できるシステムに設計されている。また間欠型通信を可能とする,アナログRF回路を含めた無線システムのシミュレータ実現も行った。これにより,3G~100Mbpsのスループットと500~10m程度の遠・近距離無線通信を,低消費電力システムにより実現する予定。 (3)低消費電力指向D2Dセキュア無線ネットワークの研究: 多数の無線デバイスが接続されたネットワークを想定し,最適なネットワークルーティングとフローを実現する低消費電力指向D2MDネットワーク制御のネットワークプロトコル策定と,そのシミュレータを実現した。目標としている無線ネットワークシステムは,エネルギーハーベスティングによる電力供給を仮定しているため,必要な回路仕様の策定を行い,そのアナログ回路の設計を行った。 以上のことから,当初提案していた本研究計画にほぼ沿った形で研究が進められており,順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究計画に示した3つの各項目について,今後の研究の推進方策は以下の通り。 (1) 調和型無線通信ネットワークの研究: 調和型無線通信とは,通信チャネルの状態だけではなく,周辺デバイスの通信状況も考慮して,安定(途切れない無線)で高速な無線通信を実現する新方式である。今後は,すでに開発済みである,高効率な耐干渉・耐雑音通信を融合した無線D2MD用の調和型無線通信方式の評価を行う。良好な環境において,数百mの距離でも通信可能な方式実現に関する調査を行う。並行して,全体システムとして,耐干渉・耐雑音・超高速・低消費電力に関する性能評価を行う。 (2) 極低消費電力型高速無線通信システムの研究: 独自に設計したMIMO-OFDMAシステムのシミュレーション評価と,並行してFPGAシステムへの実装実現を引き続き行う。特に,本研究目的である調和型システムに対応すべく,動的に仕様を変更できるFPGAシステムを実現する。さらに間欠型通信を実施することで,RF回路を含めた消費電力を従来システムより最大で1/50以下にまで下げ,BB回路において,1W以下の無線システムを実現する。これにより,3G~100Mbpsのスループットと500~10m程度の遠・近距離無線通信を,低消費電力システムにより実現できる。 (3)低消費電力指向D2Dセキュア無線ネットワークの研究: 申請者グループの設計した,ネットワークルーティングとフローを最適に実現する低消費電力指向D2MDネットワーク制御方式の評価と最適化を継続実施する。目標としている無線ネットワークシステムは,エネルギーハーベスティングによる電力供給を仮定している。さらに,セキュリティを確保するため,デバイスの異常通信検出,不審データのフィルタリング,マルウェア検出などを実時間で処理する,低消費で高速なHWの設計・開発を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度後半においても,シドニー工科大学で,共同研究打ち合わせ及びフィールド実験を実施する予定であった。2020年2月から始まった新型コロナウィルスの影響で,いくつかの予定がキャンセルとなり,2020年度の7月以降に延期されている。ただし,国際共同研究を進める上での重要な打ち合わせは,可能な限り電子メイルやWEB会議などで実施しており,アルゴリズム・方式の設計,シミュレータ実装に必要な物品の導入も支障なく進められた。提案技術に関する具体的なフィールド実験などについては,予定通りシドニー工科大学で実施する計画であり,2020年度にその内容を策定済み。
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