研究課題/領域番号 |
18KK0278
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
武居 周 宮崎大学, 工学部, 准教授 (40598348)
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研究分担者 |
河合 浩志 東洋大学, 総合情報学部, 教授 (00616443)
塩谷 隆二 東洋大学, 総合情報学部, 教授 (70282689)
荻野 正雄 大同大学, 情報学部, 准教授 (00380593)
遊佐 泰紀 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 助教 (70756395)
三目 直登 筑波大学, システム情報系, 助教 (10808083)
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研究期間 (年度) |
2018-10-09 – 2023-03-31
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キーワード | ADVENTURE / UG4 / 幾何マルチグリッド / 領域分割法 / バランシング領域分割前処理 / Electrostatic Problems / Large-scale Analysis |
研究実績の概要 |
オープンソース・ソフトウエア(OSS)数値解析プラットフォームが開発され、工学・物理学の分野で広く利用されている。申請者らの研究グループは、そのプラットフォームの一つであるADVENTUREの開発を推進している。一方、ドイツにおいてもProf. Gabriel Wittum率いる研究チームがUG4を開発している。両者とも世界各国において利用されユーザ数も年々増加しているが、近年需要が高まっている電磁界解析は世界的に見ても高機能なプラットフォームがなく、機能強化が求められている。そこで本研究課題では、相補的機能強化を通じてADVENTUREおよびUG4を電磁界解析アプリケーション分野でリーディングエッジの役割を担えるプラットフォームへと昇華させる。特に、ADVENTUREでは非定常の高周波電磁界解析機能、UG4では高精度な電流密度解析機能を重点的に開発する。また、開発した両プラットフォームを接続することで、日本・ドイツ共通の解決すべき課題である落雷時の感電事故防止に向けた非定常高周波電磁界―非定常電流密度の大規模連成解析手法を確立する。 今年度は、昨年度に引続き、ADVENTUREおよびUG4において人体モデル等の実問題モデルによる計測を繰り返し実行し、ソルバの並列計算機上での最適化を行った。また,高周波電磁界解析手法の技術移転課題として音響問題への適用検討を行い、双方の並列化手法が音響解析に直接的に使用可能であることがわかった。今年度もCOVID-19の影響により、直接的な国際共同研究の推進が不可能であったが、適宜メール等を活用し、それぞれの進捗を確認した。今年度の研究実績として、査読付きジャーナル論文5本(代表者分のみ)を刊行できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度はUG4を用いて、人体の通電時の影響を明らかにするためのシミュレーションを行うために、解剖学的構造を有する数値人体モデルを用いる人体内電界(電流密度)評価に関する検討を行った。この数値人体モデルを用いる数値解析は、1辺1-2㎜程度のボクセルにより人体を近似するため大規模計算が必須であり、また、得られる電界強度の値は皮膚と脂肪などの異材境界の階段状の角点付近で過大となる「階段近似誤差」が生じるため、本来トレードオフとなる数値解析の高精度化と高速性の両立が求められる。 本研究では、この階段近似誤差の低減のため、数値人体モデルにマーチングキューブ法とラプラシアスムージングを、四面体や三角柱等の異なる要素タイプの混合により実現する平滑化機能を開発することで、階段状の異材境界を滑らかにし、接触電流密度解析の高精度化を実現した。また、メッシュ平滑化により、平滑化前のボクセルモデルと比較して更に増えた計算量に対処するため、混合要素に対応した並列幾何マルチグリッド法を開発し、数値解析を高速化した。 本来2種類の異材境界を平滑化するマーチングキューブ法において、3種類の材料が隣接する境界のメッシュ平滑化手法を世界で初めて提案し、本手法による接触電流密度解析の高精度化に成功した。更に、本高精度化計算の高速化に向け、平滑化したメッシュに対し、混合要素に対応した並列幾何マルチグリッド法を適用した。その結果、計算の高速化を実現したことに留まらず、メッシュ平滑化により幾何マルチグリッド法における反復法の収束性が改善する事実を、世界に先駆け発見した。 以上成果は、研究計画時には予想していなかったものであり、当初の計画以上に進展していると判断できるものである。
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今後の研究の推進方策 |
今後、ADVENTURE、UG4の双方を用いた人体モデルによる静電界解析を並列計算機環境上で、さまざまな条件により実行することで、これらの異なる数値計算プラットフォームを相互構築してゆく。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19による感染症拡大の影響により予定されていた海外共同研究および国際会議への現地参加を見合わせたため。
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