研究課題/領域番号 |
18KK0282
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研究機関 | 同志社女子大学 |
研究代表者 |
奥田 紫乃 同志社女子大学, 生活科学部, 教授 (60352035)
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研究分担者 |
田口 智子 東京藝術大学, 大学院美術研究科, 研究員 (90755472)
岡嶋 克典 横浜国立大学, 大学院環境情報研究院, 教授 (60377108)
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研究期間 (年度) |
2018-10-09 – 2022-03-31
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キーワード | 文化財 / 保存・修復 / 色彩情報 / 材料物性 |
研究実績の概要 |
スペインの美術史を理解し、文化財の表面特性を把握することを目的とし、ピカソ美術館、カルメンティッセン博物館、マラガ美術館、アルハンブラ宮殿、アルハンブラ博物館、アルカサバ、グラナダ考古学博物館、ティロス家博物館を訪問して情報を収集した。絵画に関しては、13世紀以降のスペイン絵画を所蔵するカルメンティッセン美術館、宗教画及び静物画のコレクションを中心とするグラナダ美術館、スペインを代表する画家であるピカソの各時代の作品を有するピカソ美術館に訪問したことにより、スペイン美術史を概観することができた。特にスペインの風俗・慣習を描くcostumbrismo作品や、厨房の様子を描くbodegonといった作品は、主題や表現などで日本の絵画作品との比較を今後検討したい。また、グラナダ考古学博物館及びアルハンブラ博物館では、イスラム文化の影響を受けたタイルなどの考古遺物、工芸品を鑑賞した。 また、グラナダ大学では、研究代表者・分担者がこれまでに実施した関連研究を紹介し、今後の共同研究の方向性について議論した。Luis Gomez先生、および美術学科教授でありグラナダ美術館の研究員でもあるFrancisco Collado先生も同席され、様々な観点から検討した。具体的にはエイジングのシミュレート画像の生成技術を用いて対象物のエイジング状況を再現することや、好ましい古さ感をcross-culturalの観点から比較検討することなどを中心に進めていくこととなった。 次回はMadridでMuseo Nacional Centro de Arte Reina Sofia、Museo del Prado、Museo Nacional Thyssen-Bornemiszaを視察するとともに、コンプルテンセ大学のProf. Daniel Vazquez Molini先生と打合せを実施することが決定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
採択内定通知の後、skype等を利用しながら研究打合せを実施し、現時点で許可が得られた数点の絵画や工芸品、および購入した絵画を対象として、材料学的分析や表面の分光反射特性の測定を実施し、測定・分析手法の確認や配慮事項などを検討した。また、3月下旬から4月初旬にスペインに渡航し、これらの進捗状況をスペインの共同研究者に示すことができていることから、おおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
スペインにおける文化財を研究対象とすることを前提に、まずは国内で入手可能な文化財を対象として、文化財の色彩・質感を材料物性学的に把握する。その材料(色彩)を用いてカラーパッチを作成し、これを強制的に紫外線等により劣化させて、エイジングに伴う表面の色・質感の変化特性を測定し、得られた変化特性を用いてエイジング・シミュレート画像を作成する。具体的には、奈良女子大学所有の正倉院模造宝物の中から「紅牙撥鏤尺」「紅牙棊子 紺牙棊子」「紅牙撥鏤手板」「撥鏤帯鉤 紺地花喰鳥文」「撥鏤帯留 朱地孔雀文」「撥鏤帯留 朱地花喰鳥文」、および数点の文化財を購入し、これらの絵画・工芸品を対象として材料分析や色彩分析を実施する。さらに、好ましい古さ感をはじめとするエイジングに関する心理評価の傾向について、エイジングシミュレート画像を対象として、日本人とスペイン人による評価を比較検討する。 夏季にMadridをProf. Manuel Melgosa先生と共にマドリードを訪問し、スペインの文化財の調査を継続するとともに、コンプルテンセ大学のProf. Daniel Vazquez Molini先生と研究打合せを実施する。また、グラナダ大学での測定・実験を年度内に実施するための準備を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
スペインの美術品に関する調査、およびグラナダ大学での共同研究に関する打合せのため、3月下旬から4月初旬までスペインに出張したが、1名の研究分担者が所属する研究機関において、帰国日が2019年度となることから、出張旅費の全額を2019年度執行扱いとすると判断された。発生している繰越金のほとんどは、この事由によるものである。
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