研究実績の概要 |
奈良女子大学所蔵の正倉院模造宝物6点(紅牙撥鏤尺,紅牙棊子,紺牙棊子,紅牙撥鏤手板,撥鏤帯鉤 紺地花喰鳥文,撥鏤帯留 朱地孔雀文,撥鏤帯留 朱地花喰鳥文)の、二次元分光放射輝度計による色彩情報の取得、及び蛍光X線分析装置による材料分析を実施した。その結果、紅牙撥鏤尺では象牙の彩色に顔料と染料が併用され、赤色箇所には正倉院宝物で用いられた臙脂とは異なる色材が使用された可能性があることについて、ACA2019で発表した。 豊原国周作の浮世絵"見立橋尽 日本橋 河原崎三升","江戸名所合之内 和尚次郎(七)"の色彩情報を、2次元分光放射輝度計を用いて様々な照射角度から取得するとともに、人工太陽照明灯装置を用いて色彩劣化過程における画像情報も取得した。取得データから、CIE-015に規定された12種の照明光源、3種の照度条件を再現する計78種のシミュレート画像を生成した。R2年2月に国際共同研究者のグラナダ大学のMelgosa教授と共に、これらの画像を視対象としたスペイン人による主観評価実験を実施した。同画像を用いた日本人による評価実験も実施途中である。また、本研究の知見はアルハンブラ博物館に展示されているナスル朝時代(12-15C)ムーア様式碑銘彫刻の照明評価研究にも反映された(Sensors 2019,19(24),5400)。 R元年10月にMadridを訪問し、複数の美術館でスペイン絵画を視察するとともに、ソフィア王妃芸術センター、ティッセン=ボルネミッサ美術館を訪問し、バックヤードの視察、及び美術館スタッフと情報交流した。また、Madrid Complutense大学で国際共同研究者のVazquez教授、Alvarez教授と研究の方向性を議論した。R2年3月に両美術館を再訪し、数点の絵画の色彩情報の測定を実施する予定だったが、COVID-19の影響により実施できなかった。
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