研究課題/領域番号 |
18KK0284
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研究機関 | 株式会社国際電気通信基礎技術研究所 |
研究代表者 |
川鍋 一晃 株式会社国際電気通信基礎技術研究所, 脳情報通信総合研究所, 研究室長 (30272389)
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研究分担者 |
小川 剛史 株式会社国際電気通信基礎技術研究所, 脳情報通信総合研究所, 主任研究員 (10614323)
森岡 博史 株式会社国際電気通信基礎技術研究所, 脳情報通信総合研究所, 連携研究員 (20739552)
平山 淳一郎 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 主任研究員 (80512269)
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研究期間 (年度) |
2018-10-09 – 2022-03-31
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キーワード | 人間情報学 / 脳イメージング / 集中時脳状態 / 脳波情報解析法 / 転移学習 |
研究実績の概要 |
脳波データから、脳機能ネットワークが集中時に近い状態にあるかどうかを推測する脳情報解読技術と、集中力トレーニングのための可視化システムの構築を目指し、本年度は以下の4つの課題に取り組んだ。第一に、様々な課題条件に依存する、複数領域の脳活動信号間の因果関係を発見するための特徴量抽出法demixied shared component analysis (dSCA)を開発し、海外共同研究者が持つ動物の神経活動記録データに適用して有効性を検証した。さらに、ATRが所有する脳波データへのdSCAの適用可能性を検討した。第二に、共同研究者のHyvarinen教授らとともに、多次元脳活動時系列データに内在する、時間プリミティブとよばれる特徴的な局所時間構造を抽出する非線形アルゴリズムであるlocal space-contrastive learning (LSCL)を開発した。この手法を安静時および課題時のfMRIデータに適用したところ、異なる領域、時間帯に繰り返し現れる複数の時間プリミティブが存在することと、その一部は流動性知能などの行動指標と関連があることを示した。また、LSCLを空間解像度の低い脳波データに適用する際の課題と、変数変換などの対応策について検討した。第三に、被験者9人に対して、集中力を必要とする運動イメージトレーニング中の脳波データを収集し、異なる集中状態間での脳波信号の違いを解読する手法を構築し、安静状態との脳活動パターンの違いについて検証した。第四に、ATRが保有する、安静時、および集中が必要な課題実施時のEEG-fMRI同時計測データに基づいて、機械学習により、脳状態を推測する特徴量を構築した。さらに、ATRが保有するリアルタイム可視化システムを用いて、特徴量スコアを被験者にフィードバックする予備実験を行った。その成果を第7回日本BMI研究会で報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
脳情報解析手法の開発については、共同研究者のHyvarinen教授との共同研究を含む、複数の国際共同研究で成果が上がっている。また、博士卒のフルタイム研究技術員、修士学生のリサーチアシスタントの協力により、集中力を必要とする運動イメージトレーニング中の脳波データ9名分を収集し、解析するなど研究を加速できた。一方で、感染症の流行により、外部被験者に対する実験が以前より難しくなったため、集中状態の脳波フィードバック実験に関しては、予備的な実験が終わったところである。加えて、海外出張や海外からの研究者招聘が原則中止となり、対面での研究交流は残念ながらできなかった。検討の結果、2021年度に国内外の感染状況が好転することを期待して、研究期間を1年間延長することにした。
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今後の研究の推進方策 |
前年度までに開発した様々な特徴量抽出法や脳情報解析法を、ATRの既存、および本年度取得する脳波データに適用し、その解析結果について整理する。これまでに試作が行われている、SPLICEの改良アルゴリズムに加えて、上記で有望なものが見つかれば、ATRが保有する脳情報リアルタイム可視化システムへ統合実装する。このシステムを用いて、本研究チームのメンバーが参画している別のプロジェクトと協力しながら、集中状態の脳波フィードバック実験を実施する。年度後半になって海外との往来上の問題がなくなれば、 フィンランドへの海外出張や海外からの研究者招聘も検討し、今後取り組むべき研究テーマについて議論することで、国際共同研究のさらなる発展につなげる。
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次年度使用額が生じた理由 |
感染症流行により、海外出張や海外からの研究者招聘が原則中止となり、また、外部被験者に対する実験が以前より難しくなった。2021年度に国内外の感染状況が落ち着き、対面での研究交流や、より多くの外部被験者実験を実施できるようになることを期待して、研究期間を1年間延長するのが妥当であると判断した。本年度の研究を加速するため、データ取得や解析に従事するリサーチアシスタントを雇用するとともに、年度後半になって海外との往来上の問題がなくなれば、フィンランドへの海外出張や海外からの研究者招聘も検討する。
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