研究課題
HIV-1逆転写酵素では、各種阻害剤に耐性となる変異が多数報告されており、配列決定を行ってから、有効な阻害剤を選択しなければならない。しかし、医療現場で配列決定を行うことは、新興国では困難である。本研究では、インドのジャイプルに集中研究室を設立し、変異の迅速な検出を実現することを目的としている。①海外展開については、インド・ラジャスタン州のトラックドライバーを研究対象者とした HIV/AIDS検査の受診行動に関連する要因を明らかにするためのオンライン・アンケート調査について計画書と倫理審査申請書を作成し、ビヤニ大学倫理審査委員会に提出し、2021年3月に承認を得た。また、2020年9月にインド・ラジャスタン州・ジャイプル市のビヤニ大学にHIV-1逆転写酵素をコードするRNAを標的としたRNA増幅用試薬を送った。②温度勾配ゲル電気泳動(TGGE)の変曲点を検出するソフトウエアの開発については、主として深層学習による軌跡検出処理ならびに変曲点検出を実行する処理の実装を行い、精度向上の可能性を検証した。YOLOでは過検出が抑制されるものの検出漏れも多く発生した。一方、RetinaNetを基本とすると検出漏れは少ないものの、過検出が目立った。双方の問題の改善を検討した結果、YOLOにおける検出漏れを減らすよりもRetinaNetベースの手法の過検出を減少させる方が有望と判断した。損失関数の再検討を行ったところ、0.5以下あるいは2以上を乗じた場合により良好な精度が得られることが判明した。③TGGEによる1個の変異の検出については、HIV-1逆転写酵素で最も多く現れる薬剤耐性変異であるM184Vを題材とした。282 bpの野生型の遺伝子断片と変異型の遺伝子断片をTGGEにかけたところ、WTとM184Vの変曲点の位置は明らかに異なっており、両者がTGGEで識別できることが示された。
3: やや遅れている
海外展開については、新型コロナウィルス感染拡大の影響で海外出張が不可能となったため、現地・ビヤニ大学やその他のステークホルダーとは電子メール、Whatapp(日本でいうライン(LINE)のようなアプリ)、あるいはズーム会議という形式でしかコミュニケーションがとれなかった。
・海外展開:インドでのHIV感染のハイリスクグループであるトラックドライバーを対象としたHIV/AIDS検査の受診行動に関連する要因を明らかにするためのオンラインアンケート調査を継続し、300名以上の参加者データの収集と解析を試みる。サンプル数を増やすため、またよりHIV罹患率の高い地域の被験者に参加してもらうため、ジャイプル市からムンバイ市に対象地域を広げる。さらに、ジャイプル郡SK Gout Medical College, Department of Community Medicine助教のDr. Priyanka Kapoorの協力のもと、病院に登録しているHIV陽性患者を対象にHIV-1とCOVID-19の検査と治療薬の耐性や副作用等に関するアンケート調査を実施する予定である。・TGGEによる変異の判別:TGGEによる1塩基検出については、M184V以外の各種変異についても長さや断片中の変異の位置(中央あるいは端)が異なる各種断片を設計し、TGGEのパターン調べることで、安定して変異が同定できるプライマーを設計する。さらに、RPA酵素の開発を継続する。・ソフトウエアの開発:変曲点を含むバウンディングボックス予測に関する他のパラメタだけでなく、バウンディングボックス位置予測、軌跡分割部分に関する関数内のパラメタについてもその値を変化させた際の挙動を算出し、より最適な損失関数の定義を見出す。また、損失関数の各パラメタの最適値が、異なる資料に対して得られるTGGE画像毎に依存するか否かについてもデータ数を可能な限り増やしながら検証実験を進め、資料依存性の低い、本問題により適した損失関数を見出す。リファレンスが同一である複数のTGGE画像を入力として、それらに対して統合判定処理を導入し、変異に対応する変曲点を認識する処理手法についても設計・実装し、その精度を評価する。
新型コロナウィルス感染拡大の影響で2020年2月以降海外出張が不可能となったため。
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