研究課題
2019年4月の終わりから5月の初めにかけて、台湾南東部(台東県成功鎮)において、マンボウの野外調査を行った。定置網にかかったヤリマンボウ(マンボウ科の一種)一匹を船の甲板に上げ、背中に記録計のパッケージを取り付けた。その際、記録計のパッケージから伸びるワイヤー状の温度センサーをヤリマンボウの背中の筋肉に挿入し、体温を計測できるようにした。体長を計測した後、ヤリマンボウを海に放流した。翌日、記録計のパッケージが魚体からタイマーで切り離され、海面に浮上した。電波信号を頼りに船でそれを探し出し、回収した。2019年5月の終わりから6月の半ばにかけて、再度、台湾に渡航し、同じ海域にてサメ類の調査を実施した。延縄漁を実施し、捕獲されたヨシキリザメ二匹に記録計のパッケージを取り付けて放流した。ヤリマンボウの時と同様に、ワイヤー状の温度センサーをサメの筋肉に挿入し、体温を計測した。翌日、魚体から切り離されて海面に浮上した記録計を、電波信号を頼りに船で探し出し、回収した。ヤリマンボウとヨシキリザメそれぞれについて、得られたデータの解析を進めた。まず、遊泳行動のデータを用いて、それぞれの魚の潜水パターンと潜水中に経験する水温の変化を調べた。次に、潜水にともなう魚の体温の変化を分析した。ヤリマンボウもヨシキリザメも、昼夜を問わずに深い潜水を繰り返しており、潜水中には大きな水温の変化を経験していた。それにもかかわらず、潜水中の体温の変化は小さかった。すなわち、これらの魚は、体が冷え切る前に潜行をやめて浮上を始め、また体が温かくなりすぎる前に浮上をやめて潜行を開始していた。そのような鉛直移動による体温調整方法が明らかになった。
2: おおむね順調に進展している
大型回遊魚の生理生態に関するデータが順調に集まっており、またデータの解析も予定通り進んでいるので、「おおむね順調に進展している」と判断した。
当初の予定通り、研究を進めていく。複数種の大型回遊魚類から遊泳行動と体温のデータを取得し、それらを分析することによって、それぞれの魚類の水温適応の特徴を明らかにする。
当該年度は予定通りの野外調査を実施した。積極的に延縄漁や定置網漁に参加したものの、調査に適した大型回遊魚がなかなか捕獲できなかった。結果として、記録計を装着して放流できた魚の数が当初の予定よりも少なく、そのため支出も少なくなった。次年度も引き続き野外調査を行い、なるべく多くの大型回遊魚を捕獲し、記録計を取り付けて放流する予定である。
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すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (11件) (うち国際共著 7件、 査読あり 11件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
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