研究課題/領域番号 |
18KK0293
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研究機関 | 国立極地研究所 |
研究代表者 |
渡辺 佑基 国立極地研究所, 研究教育系, 准教授 (60531043)
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研究分担者 |
中村 乙水 長崎大学, 海洋未来イノベーション機構, 助教 (60774601)
松本 瑠偉 一般財団法人沖縄美ら島財団(総合研究センター), 総合研究センター 動物研究室, 上席研究員 (90816430)
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研究期間 (年度) |
2018-10-09 – 2023-03-31
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キーワード | 行動生態 / 環境適応 / 水温 / 魚類 |
研究実績の概要 |
令和3年度は令和2年度に引き続き、新型コロナウィルス感染拡大の影響により、野外調査の機会が限られていた。海外での野外調査は中止せざるを得なかったが、国内においては沖縄で野外調査を実施した。定置網漁船に乗船し、捕獲されたイタチザメ1匹に記録計のパッケージを取り付けて放流した。2日後、サメの体から切り離されて海面に浮上したパッケージを海上で探し、回収した。イタチザメの遊泳行動、水温、体温(筋肉の温度)の同時計測データを得ることができた。 ヨシキリザメの調査結果を論文にまとめ、Marine Biology誌に発表した。データによると、サメが深い潜水を繰り返す際、周囲の水温は急速に変化した。しかし、サメの大きな体に起因する熱の慣性力のため、体温はゆっくりとしか変化しなかった。サメは体温が下がり切る前に潜行をやめて浮上を始め、また体温が上がり切る前に浮上をやめて潜行を開始していた。そのようにして、ヨシキリザメは自らの体温を比較的狭い範囲の中に収めていることがわかった。また、深い潜水を繰り返す際、サメは幅広い深度帯でイカ類などの獲物を追いかけていた。ヨシキリザメが繰り返す潜水行動は、体温調節行動と捕食行動の組み合わせであることが明らかになった。 研究分担者の中村がマンボウの遊泳行動、水温、体温のデータを分析し、Journal of Experimental Marine Biology and Ecology誌に発表した。マンボウもヨシキリザメと同様に、深い潜水を繰り返しながら体温を調節する。その際の体温の上昇速度は、温暖な海域でも寒冷な海域でも変わらなかった。一方、体温の低下速度は温暖な海域で速く、寒冷な海域で遅いことがわかった。このことから、マンボウは水温に合わせて体温の低下速度を生理的に調節する能力を持つことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和3年度は新型コロナウィルス感染拡大の影響により、海外の野外調査ができず、国内の調査の機会も限られていたため、「やや遅れている」と判断した。ただし、これまでに取得したデータの解析や論文の執筆は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年5月現在、調査のための海外渡航が少しずつ可能になりつつある。新型コロナウィルス感染拡大の状況を見ながら、可能な限り、海外、国内の両方で野外調査を実施する。また、これまでに取得したデータの解析と論文の執筆を進める。大型回遊魚類から遊泳行動、水温、体温の同時計測データを取得し、それぞれの種について、水温適応の特徴を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和3年度は令和2年度に引き続き、新型コロナウィルス感染拡大の影響により、野外調査の機会が限られていた。そのため、当初の予定よりも支出が大幅に減った。次年度は、新型コロナウィルス感染拡大の状況を見ながら、できる限り野外調査を実施し、大型回遊魚に記録計を取り付けて放流する予定である。
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