研究課題
2019年8月7-16日にエルデネト地域の河川水のモリブデン汚染源の特定を目的とした現地調査を行った。その結果、河川モリブデン濃度が上昇する河川中流域には火力発電プラントが存在することを見出した。プラント周辺の調査の結果、冷却用に地下水をくみ上げ、再び河川に放水していることが認められた。放水される水試料をICP-MSを用いてモリブデン濃度の測定を行ったところ、放水試料には数100 ppbを超える高濃度のモリブデンが含まれることが明らかとなった。またエルデネト地域の複数のサイトから地下水を採取し予察的にモリブデン濃度の測定も行った。その結果、いくつかの試料で地下水には1000 ppb前後の高いモリブデン濃度が検出された。これらの結果は、エルデネト地域では地下水が高濃度のモリブデンに汚染されており、地下水利用に起因して表層水がモリブデンに汚染されている可能性を示唆している。室内実験からpHに依存するモリブデン脱離・吸着メカニズムの検討を行った。エルデネト地域の河川堆積物において、モリブデンのホスト鉱物はフェリハイドライトであることがわかっている。そのため、河川で見られる100 ppbのモリブデンに対するフェリハイドライトを用いた吸着実験を行った。その結果、いずれの実験条件でも、pHが7から9の条件で、モリブデンの吸着挙動が急激に変化することが明らかとなった。エルデネト地域の河川のpH変動はおよそpH7~9の範囲である。この結果は現地で見られるpH条件において、モリブデンの吸着・脱離はセンシティブに変化することをしている。したがって、エルデネト地域では季節変動に対応した何らかのプロセスによりpHが変化すると、溶液のモリブデン濃度は大きく変化する可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
エルデネト地域における河川中モリブデンの汚染源を明らかにした。また、室内実験よりモリブデンの吸着・脱離挙動を明らかにした。研究はおおむね予定通りに進展していると判断できる。
エルデネト地域におけるモリブデンの汚染源が地下水であることを明らかにした。次年度では、エルデネト地域における地下水モリブデン濃度の空間的・時間的変動を検討する。また、室内実験で得られたモリブデンの吸着挙動をモデル化し、エルデネト鉱山で認められるpHの変化に伴うモリブデンの溶出挙動と比較する。
本研究の提案段階で予定していたエルデネト地域における定期観測を採択前に別予算で行っていたため、研究2年目では次年度使用額が生じた。本年度までにエルデネト地域において河川水汚染の原因は地下水であることが明らかとなった。最終年度では2年目に繰り越した予算を利用し、エルデネト地域のおける地下水汚染状況の調査を行う。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (8件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件)
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