研究課題/領域番号 |
18KK0297
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
原本 英司 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (00401141)
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研究分担者 |
田中 靖浩 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (50377587)
清 和成 北里大学, 医療衛生学部, 教授 (80324177)
古川 隼士 北里大学, 医療衛生学部, 講師 (90632729)
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研究期間 (年度) |
2018-10-09 – 2022-03-31
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キーワード | 健康関連微生物 / 指標微生物 / 地下水 / カトマンズ盆地 / 新型コロナウイルス |
研究実績の概要 |
2020年度は,新型コロナウイルス感染症の影響を受けて,研究代表者・分担者による現地調査は実施できなかったが,代表者の研究室の博士研究員であるSarmila Tandukar氏が現地に長期滞在していたことから,Tandukar氏およびカウンターパートの協力を得て,2020年7月~2021年2月に,2ヶ所の下水処理場で68試料(流入水,放流水:各34試料),河川水2試料,病院排水1試料,汚水2試料,計73試料を採取した。これらの水試料に対し,糞便汚染指標細菌として大腸菌群と大腸菌を培養法,糞便汚染・下水処理低減指標ウイルスとしてクラスファージ,トウガラシ微斑ウイルスおよびタバコモザイクウイルスをリアルタイムPCR法により測定した。さらに,現在世界的な問題となっていることから,新型コロナウイルスを対象に加え,4種類のリアルタイムPCR法を用いて測定を実施した。 また,昨年度までに採取した水試料(細菌DNA抽出液)を用い,tetBやqnrS等の薬剤耐性遺伝子,クラス1インテグロン(intI1)をリアルタイムPCR法で測定し,下水処理での低減効果や,薬剤耐性遺伝子の汚染指標としてのクラス1インテグロンの有効性等を検証した。 これらの研究活動により,カトマンズ盆地の水環境中における病原微生物汚染の実態に関する知見が得られ,特に,下水や河川水から新型コロナウイルスの検出に成功した点は,感染流行の全体像が把握できていない現地において,下水疫学調査の活用が有効となり得ることを示唆するものであり,極めて重要な成果であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度は,新型コロナウイルス感染症の影響を受けて,研究代表者・分担者による現地調査は実施できなかったが,前年度までに採取した水試料を用いた研究を実施し,新たな知見を得ることができたため。また,現地に長期滞在していた博士研究員とカウンターパートの協力により,2020年7月~2021年2月に下水や河川水等を73試料採取し,これらの水試料中のウイルスや糞便汚染指標細菌を測定することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに採取した細菌DNA抽出液やウイルス濃縮液等を用い,病原細菌やウイルスの測定作業を行う予定である。また,新型コロナウイルス感染症の流行状況を注視しながら,現地への渡航が可能となった場合には現地調査を行う計画であるが,渡航できない場合にも,カウンターパートの協力を得て可能な限りの調査を実施する予定である。また,下水処理場でのウイルスの低減効果や薬剤耐性遺伝子に関する論文を執筆する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は,代表者と分担者あわせて4名が2回ずつの現地調査を予定していたが,新型コロナウイルス感染症の影響で渡航することができなかった。また,研究打合せはすべてオンラインで実施し,学会もオンラインでの開催であったことから,旅費は一切使用しなかった。代表者の研究室に所属する博士研究員(研究協力者として交付申請書に氏名を記載済み)が現地に長期滞在していたことから,カウンターパートの協力も得て現地での採水調査は実施できたものの,現地における新型コロナウイルス感染症の流行状況が深刻でロックダウンが繰り返し実施されたことから,当初計画通りの試料数は採取できなかった。そのため,実験試薬等の消耗品の購入も計画していた使用額よりも少なくなった。今回生じた次年度使用額は,これまでに採取してきた試料に対し,多種類の薬剤耐性遺伝子等を測定するために活用する。
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