運動が脳内でどのように制御されているかを明らかにするため、マカクザルを実験対象として、運動野と感覚野、ならびに小脳や視床における符号化方式を解明する研究に取り組んだ。今回の滞在中には共同研究者のグループが特殊な制約を課したreach-out taskを行うように訓練したマカクザルの前頭葉と頭頂葉に電極を埋め込み、そこから得られるextracellular recordingsに対してスパイクソーティングを行うことでスパイク系列を得ている。さらにタスク実行中の手の運動の軌跡を外骨格を使って記録している。研究代表者はスパイク系列と運動軌跡を視覚化するシステムを構築し、二種のデータを照らし合わせることで対応関係を調べられるようにした。
視覚化ツールは分析のための土台となるものであるが、符号化方式を数理的な形で明らかにするには手の運動の軌跡という高次元表現のままでは困難であり、そこから生理学的に意味を持つ低次元の表現に変換する必要がある。共同研究者からのフィードバックに基づき、軌跡から運動を特徴付ける定量的な指標を計算する部分の実装を進めた。指標の選択にあたっては共同研究者が長年取り組んできた運動研究についての経験、また運動情報符号化において近年提案されているモデルについての知見について学ぶことが有益であった。さらに運動の符号を時間発展するプロセスとして表現するための数理モデルの構築について議論を進めた。
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