研究課題/領域番号 |
18KK0310
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
品川 高廣 東京大学, 情報基盤センター, 准教授 (40361745)
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研究期間 (年度) |
2019 – 2022
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キーワード | 仮想化技術 |
研究実績の概要 |
準パススルー型仮想マシンモニタのアーキテクチャを発展させた安全かつ信頼できる実行環境に関する研究を3件ほど実施した。 まずクラウド環境において仮想マシンとコンテナの両方の利点を持った実行環境を実現するために、CPUのハードウェアでケーパビリティをサポートするCHERIというアーキテクチャを活用して、ページ単位の保護ではなくバイト粒度での厳密な保護を可能にしつつ、既存のソフトウェアとの互換性を保ったまま切り替えも高速にできるようにし、なおかつ複数の保護ドメインを用意に入れ子にできるようにした新しい仮想マシンの概念を提案して、仮想化のオーバーヘッドを低く抑えた安全な実行環境を実現した。 また、従来のCPUにおいて複数の仮想マシンを入れ子にしたときのオーバーヘッドを削減するために、物理ページに対してタグをつけられる新しいハードウェアの機能を活用することで、ページングにおけるパススルーの度合いを向上させて、ネステッドページングを部分的に不要にできる仮想マシンモニタの最適化機構に関する研究を実施した。 さらに、クラウド環境におけるメンテナンス性の向上を目指して、仮想マシンモニタ自身のセキュリティアップデートなどを無停止でおこなえるようにするために、仮想マシンモニタ自身を一時的に仮想マシン内で動作させて、メンテナンス中には仮想マシンを同一マシン上の別の仮想マシンモニタに一時的にマイグレーションし、メンテナンス終了後には仮想化を解除してオーバーヘッドなしで仮想マシンモニタを実行できる仕組みについて、実際にクラウドサービスを運営している事業者の意見も交えて議論をおこなって、今後の研究の方向性について議論をおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初計画では1つの研究テーマを実施する予定であったが、研究に関する議論を進めるうちに既に実施している研究とのシナジー効果が得られ、また研究者の数が多いこともあって複数のテーマを同時に進めることが可能になり、予定以上の分量の研究テーマを実施できるようになった。また、そのうちの一つは既にシステムソフトウェアの分野のトップカンファレンスの一つであるOSDIに論文が採択された。OSDIは1994年に第1回が開催されて以来当該分野で世界No.2の国際会議として知られているが、OSDIに著者の一人の所属が日本の大学である論文が採択されたのは28年の歴史の中で初めての快挙である。
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今後の研究の推進方策 |
対面で議論する機会が増えてきたことから、今後は現在実施中の研究を着実に進めていくほか、新たなアイデアに関する議論も密に行って国際共同研究の範囲を広げていくことを目指している。また、帰国後も継続的に国際共同研究を続けていくための方策を滞在期間中に検討し、そのための準備を実施していくことを考えている。
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