ビッグデータを解析する数理手法がなくグローバル化による問題が解決できない国際政治学と,基盤的数理手法はあるが,実応用先やそれに必要な拡張が不足している情報学を繋げるために,海外共同研究者(国際政治学)が,研究代表者(情報学)と議論を重ねることで,基盤課題「若手研究(A)グローバル・サプライチェーンの健全化に関するデータ中心科学的研究」の成果に関して,政策応用のために必要な(経済主体は,何故その行動を選択したのかという)社会学的な動機付けや因果を推論した.また,意味付けに必要な減少の追加の解明点を整理し,研究代表者が解明に必要な数理的手法を複雑ネットワーク科学等により開発した.具体的には,下記の(1)から(3)を明らかにした. (1)経済的自由主義(企業の利潤追求)が無意識に悪い企業との間接的な繋がりを生む問題の可視化をおこなった.企業の有価証券報告書等に記載のある企業間の取引関係をつなぎ合わせることで,グローバル・サプライチェーンを描き,調達経路が人件費の安い地域に集まっていく様子を可視化した. (2)グローバル化が武装勢力と市民を間接的に繋げる「グローバルな社会的責任」問題では,遠き地の他人事と考える人々に紛争解決に向けた規範意識を形成させるために,国による法規制の違いから迂回輸出が発生している様子を可視化することで,武装勢力と我々個人との繋がりの頻度を見える化した. (3)経済ネットワークを通じた間接的な損益が生む「国際紛争の抑止力」の存在問題では,グローバルサプライチェーンとグローバル投資ネットワークとの依存関係の一部を明らかにした.これは将来的な経済力による国際紛争の抑止研究につながる.
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