研究課題/領域番号 |
18KK0324
|
研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
長野 明子 静岡県立大学, 国際関係学研究科, 教授 (90407883)
|
研究期間 (年度) |
2019 – 2021
|
キーワード | レキシコン / 派生形態論 / 言語接触 / 語源 / 生物名称 |
研究実績の概要 |
言語接触(language contact) とは、異なる言語同士や方言同士が互いに影響を及ぼし合う現象をいう。本研究は、言語接触の現象が、ヒトの言語体系のなかでもレキシコンにとりわけ大きな影響を与えることに注目し、それを理論言語学の枠組みで記述・説明することを目的としている。 令和2年度の活動の最も大きな実績は、西山國雄・長野明子(2020)『形態論とレキシコン』(開拓社、東京)を上梓したことである。本書は、全22巻からなる「最新英語学・言語学シリーズ」のなかの1巻であり、形態論の研究史と現代の多様な形態理論を概観し、言語学における各形態論研究の位置づけを解説した専門書である。近年の形態論研究の具体的トピックを解説し、レキシコン研究については、項構造、語彙概念構造、生成語彙論を扱っている。本書により、国内で理論言語学や形態論・語彙論研究の裾野が広がることが期待できる。 令和元年度に滞在したオハイオ州立大学言語学科(米国)のAndrea Sims准教授とは遠隔形式で共同研究を続け、令和2年9月に同言語学科で学部生を対象としたビデオ講義を行った。Sims准教授が指導する博士候補生に研究助言をしたり、形態論分野の国際学会の企画にも加わっている。また、リヨン大学(フランス)のVincent Renner教授とは、blending (混成)と呼ばれる語形成について日仏語の比較を行った。また、来年、国際学会で語形成関連のワークショップを行うことを共同企画している。 3点目として、進化生物学・情報工学の専門家が行う、地球規模での語彙拡散についての研究に参加した。これは、生物の進化と生物名称の地理的分布を関連づけようという興味深い研究であり、工学的手法を用いることによってある種のパターンが見えてくることが察知できた。今後もこのような観点から語源研究を見直してみたい。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「研究実績の概要」に書いたように,本課題の理論的側面での研究は順調に進展している。しかしながら、令和2年度の新型コロナウィルスの世界的蔓延の結果、研究実施計画において予定していたリヨン大学の言語学研究室への研究滞在が行われていない。また、2021年度後期に予定していた海外研究者招聘も見通しが立たなくなってしまったため、再調整しなければならない。さらに、2021年6月末に予定していた学会Word-formation Theories / Typology and Universals in Word-formation でのワークショップも同じ理由で行うことができなくなった。同学会は、1年延期にして対面形式で2022年6月末にP.J. Safarik University(スロバキア)で行われる予定なので、Vincent Renner氏(リヨン大学)およびAleksandra Bagasheva(ソフィア大学)と実施に向けた再調整と再検討を行わねばならない。。
|
今後の研究の推進方策 |
本課題の推進上、遅れてしまっている点への対処を行う。具体的には、リヨン大学への研究出張と、日本への海外研究者招聘について対策を練る。
令和元年度にオハイオ州立大学で行った研究について、国際学会で研究発表を行い、論文を投稿する。
語源および語彙拡散に関する大林武氏・山田和範氏(ともに東北大学情報科学研究科)との共同研究について、言語学分野での共同研究者を増やす。
|