研究課題
2021年度も長期の海外渡航・研究の実施は困難であり、国内での研究遂行となった。(1)共同研究者であるMaja Vodopivec氏(Leiden University)とはオンラインで定期的に連絡を取り、課題について議論を行なった。とくに、帝国主義・植民地主義がジェンダー暴力として顕在化する状況や、その持続的影響についての議論が有意義であり、「コンフリクト」の観念の再定義の必要性が示唆された。(2)国内での研究においては、後に上げる業績の他、ミネルヴァ書房より2022年に刊行予定の『論点・ジェンダー史学』に、「戦時性暴力」および「コロニアリズム」の2本の論考を寄せることができたことが成果である。これらの執筆にあたって、本共同研究で重視する、(a)コンフリクトに頻繁にさらされる地域において、ジェンダーがどのように機能するか、(b)コンフリクト下の経験がどのように記憶化されるかという二つの論点をもっとも重要な課題として検討した。(a)にあたっては、コンフリクト下において行使されるジェンダー暴力(gender-based violence)が、コンフリクトを一時的なものではなく継続的状態にすることで社会の不安定化が見られること、そうした権力行使の場面ではジェンダーがもっとも基盤的な役割を果たすことが明らかになった。(b)他方、そうしたジェンダー暴力の経験は、コンフリクト状況がある程度解消されたあとに公的に記録に残されることは少ないため、その記憶を捕捉するためにはオーラル・ヒストリーや文化史などを活用した研究と叙述が必要であることが示された。このように、海外受入機関における共同研究の実施は叶わなかったが、共同研究者との議論を個別の成果に反映することができたことは成果であった。
3: やや遅れている
渡航を前提とした研究計画であったため、研究の進捗状況に影響があったことは否めない。
2022年度は、受入研究機関のLeiden Universityも海外研究者の受入を再開したので、渡航が可能な見通しである(現在渡航準備中)。とくにVodopivec氏とはすでに協力関係が整っているため、渡航後は研究協力を加速し、 境界地域におけるコンフリクトと記憶の研究を、とくにジェンダーに注目して進める予定である。
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『クァドランテ』
巻: 24 ページ: 135-138
現代史研究
巻: 67 ページ: 59-65
『tattva』
巻: 3 ページ: 133-147
DEP - Deportate, esuli, profughe
巻: 47 ページ: 169-174
歴史地理教育
巻: 928 ページ: 56-61