研究実績の概要 |
本研究は、1) 紛争・衝突に頻繁にさらされるボーダーランドにおいて、経験の記憶化の過程に働く力学を、とくに社会的境界とも言えるジェンダーや人種の機能を重視して検討すること、2) これを踏まえて記憶のトランスナショナルな歴史の再構築に関する理論研究を行うことを目的として、紛争など極度の危機におけるジェンダー暴力に着目して検討してきた。 2023年度は、2022年度に実施した海外共同研究(オランダ・ライデン大学)の成果の、論文および口頭の形式での発表が中心となった。共同研究者(ライデン大学マヤ・ヴォドピヴェツ准教授)とはオンライン、メール等の意見交換により、共同研究を継続的に推進した。 論文形式での研究発表には概説的な形式のものも含む(「コロニアリズム」「戦時性暴力」山口みどり・弓削尚子・後藤絵美・長志珠絵・石川照子編『論点・ジェンダー史学』ミネルヴァ書房86-87,174-175;「ジェンダー--規範から自己決定へいたる歴史」前川一郎編『歴史学入門 だれにでもひらかれた14講』昭和堂189-208;「ジェンダー・歴史・暴力--「家事労働」を通して--」『歴史評論』887号5-14等)。これを通じてより広く研究成果の普及と共有を図ることができたことは、大きな達成であった。 また、口頭でも、本研究課題を反映させた内容での発表を多数行うことができた(「イタリア植民地主義と「補償の政治」」世界史セミナー(東京外国語大学海外事情研究所)8月3日;「ジェンダー格差の何が問題か 家事労働の視点から--身近なところからグローバル社会まで」2023夏季「高校生グローバルスクール」(西東京三大学連携・協働高大接続教育センター)8月10日等)。
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