本年度は研究期間の最終年度ということで、これまでの研究成果を文章の形でまとめながら、本研究プロジェクトの研究成果を論文集として出版するための作業を行った。共同研究者のうち2名と共に論文集の編集作業を行い、共同研究者およびその他の研究者、総勢14名からなる論文執筆者たちと連絡を取り合いながら、論文集をまとめた。昨年度のうちにベルギーに本拠地を置く Brepols という出版社の Studies in Old English Literature というシリーズの中の一冊として出版されることが決まっていたが、夏季には英国で共同研究者達と最終調整を行い、全ての原稿を取りまとめ、細かい調整作業を終えたのち、出版社に原稿を送付した。その結果、年度末には本書が出版された。本論文集の中で、研究代表者自身が担当したのは、共同編集者2名と共に執筆した序論と、研究代表者自身が執筆した章である。研究代表者自身の執筆した章は、後期古英語期に活躍したAElfricの著した Catholic Homilies の中の説教に見られるアングロ・サクソン時代の世界観が反映された一説についてのものである。この論考では、古代から知られていた世界観、つまり、世界はアジア、アフリカ、ヨーロッパの三部分から成るとする世界観と、キリストの架かった十字架の四辺が東西南北に対応するというキリスト教時代に発達した世界観とが重ね合わされているということを明らかにした。論文集出版後に共同研究者と本論文集に含まれる様々な著者による論考について複数回にわたり議論を重ね、これをもって本研究の総括とした。
|