研究実績の概要 |
本研究は、基課題の目的のうち、書状を中心とする史料論を共通の土台として比較古文書学の議論を発展させることを目的とする。 その目的を検討する枠組みとしての、グローバルヒストリーからみた比較史料論・文書論の有効性を確認するため、許譯兮氏(天津師範大学)をお招きして、国際セミナー「東アジアのなかの武家家訓」(2019年7月16日於立教大学)を開催し、自身も「鎌倉期の武家家訓」という報告を行い、家訓という史料類型を軸とした日中比較の可能性を検討した。また、シンポジウム Seals, Signature, and Sigillography in Medieval Eurasia(中世ユーラシアの印章、サイン、印章学)(2019年10月23日於立教大学)では、ビザンツ印章学のヴィヴィアン・プリジャン氏(フランス国立科学研究センター)、モンゴル帝国玉璽の四日市康博氏(立教大学)とともに「中世日本の印章と花押」の報告を行い、意見交換を重ねるとともに、「印章」を軸とした比較史料論の有効性を確認した。 これに加えて、比較のために中国古文書学に関する中国の研究状況を調査した。その成果として、比較史的視点から日本古文書学の課題をまとめた研究動向論文「「中国古文書学」の胎動と日本古文書学」を執筆した。また、日本古代中世の書状の歴史について概説的な論文「日本古文書和書状:从古代到中世紀」(中国語)(『中国古文書学研究初編』所収)を執筆した。 比較古文書学の視点を日本国内の古文書学的研究にフィードバックさせる試みとして、論文「中世日本における書状の広がりー古代書状論・「公文書化」論を中心にして」では、東アジアにおける日本の文書文化という視点を重視した。さらに、鎌倉幕府文書論に関する最新の研究である佐藤秀成著『鎌倉幕府文書行政論』の書評を執筆するなど、日本国内の研究動向の調査・整理を進めた。
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