研究課題
日本中世古文書学の知見を国際発信し、国際的な学術交流を進めた。第一に、Polina Barducci氏、Thomas Booth氏、Colton Runyan氏とともにケンブリッジ大学図書館所蔵興福寺旧蔵日本中世古文書の英訳・注釈作業を進め、香川大学の守田逸人氏のご協力を得て(同文書に関連する)讃岐国神崎荘の現地調査を実施した。第二に、中国の古文書学者を読者として想定して研究動向論文「日本中世古文書学の発展と課題」を執筆し、中国語への翻訳作業を進めている。こちらは『档案学通訊』(中国人民大学)に掲載予定である。第三に、海外の日本史研究の状況を日本国内で紹介することに努めた。Thomas Donald Conlan氏によって刊行された英訳日本中世史料集である“Samurai and the Warrior Culture of Japan, 471-1877”の書評を執筆するとともに、「ケンブリッジ日本学見聞録―研究・教育体制と原本の重要性」を執筆し、日本中世武士をめぐるイギリスの展示を紹介した展示評「ケンブリッジ大学図書館「サムライ:歴史と伝説」展をみて」(『歴史学研究』2023年5月刊行予定)を執筆した。さらに東京大学史料編纂所の2022年度特定共同研究課題「日本史用語グロッサリーの再構築にむけて」の所外共同研究者として参加し、グロッサリー(日本史用語の外国語訳のDB)再公開に向けた準備にあたった。そのほかにも、立教大学の日本語短期プログラムで、日本語を勉強する外国人留学生向けに「武士、サムライとは何か?:日本史における虚像と実像」と題するゲスト講義(英語)を行い、その際に通訳になる勉強をする大学院生・学部生と意見交換をした。日本中世の古文書・「法」に関する個別研究を進めるとともに、近代学問としての歴史学・古文書学の特徴を比較史・史学史の観点から再検討する作業を続けた。
3: やや遅れている
イギリス滞在中の国際共同研究はおおむねスムーズにおこなわれたが、コロナ感染拡大の影響によって日英間の渡航が制限されていたため、本研究課題で計画をしていた国際シンポジウムをはじめとして、本年度中に実施できなかった企画がのこった。2023年度に期間延長をおこなったので、23年度中に本研究課題を完成させるために、シンポジウムや出版企画などを実現していく予定である。
①共同研究者や大学院生たちと進めている日本中世史史料英訳プロジェクトを今後もZOOMなどを利用して進めていき、英訳・注釈を国際的な英文ジャーナルに投稿・掲載することを目指す。日本史史料の英訳を通して、日本語に熟達した日本研究者以外の学者に広く日本史研究の魅力と成果を発信し、日本中世史をめぐる学術的な意見交換や議論の活性化を目指す。また、2022年度中に実施した現地調査を踏まえ、興福寺・香川・ケンブリッジを結ぶネットワークの継続化を別途計画していきたい。②海外の図書館に所蔵されている日本関係資料(史料や文献)の調査と情報収集・発信を目指す。自ら滞在中、原本調査を行った史料については史料紹介を日本国内の学会誌に投稿することを目指す。③イギリスで日本学に関わる研究者を招聘し、国際的な日本研究においてイギリスや日英関係が果たしてきた役割を明確にすることを目的にした国際ワークショップの開催を目指す。
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 1件) 図書 (4件)
古文書研究
巻: 95 ページ: 19-31
歴史学研究
巻: 1036 ページ: 70-74