2017年にオーストラリアのビクトリア州でドナーの匿名性の遡及的廃止が決定された。この決定は世界に波紋をもたらし、2018年に日本で最大の精子提供の実施機関であった慶應大学で新規ドナーが確保できなくなったと報道された。こうした世界の流れをうけて立法化への動きが加速し、2020年民法特例法にドナーの法的地位が明確化された。その後、出自を知る権利の保障のために公的機関を設立するかどうか政策判断がなされず、匿名性ドナーを容認するかどうかについて判断が留保されている。出自を知る権利の先進地であるオーストラリアの研究者との共同研究による国際比較は生殖補助医療の法制度化の途上にある本邦にとって意義がある。
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