研究課題/領域番号 |
18KK0342
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
安田 洋祐 大阪大学, 経済学研究科, 准教授 (70463966)
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研究期間 (年度) |
2019 – 2022
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キーワード | 格差 / パレート効率性 / 再分配 / 安定性 / 分権的市場 / 完全競争市場 / マッチング市場 |
研究実績の概要 |
本研究は、完全競争市場をはじめとする様々な経済メカニズムが、効率性に加えて分配にどのような影響を与えているのかを評価できる理論的なフレームワークを構築し、経済メカニズムと格差、あるいは取引分布との関係を分析することを目指している。関連して、競争均衡や安定配分といった、これまでの経済学研究における代表的なベンチマークが理論的な予測(事実解明的な分析)や目標とすべき理想(規範的な分析)として相応しく“ない”ような状況の分析も行う。 現在までのところ、主要な結果として、同質財の分権的な相対取引市場において起こりうる配分の中で「競争均衡が取引数量を最少化する」ことを明らかにした。具体的には、「取引を行っていないどの参加者たちの間にも、双方が利益を得られるような取引機会が残されていない」ような配分を最小安定的であると定義する。そして、最小安定的な配分の中で、競争均衡における取引数量は常に最も少なくなることを示した。 この結果は、一定の条件のもとで異質財市場に拡張できることもすでに示している。また、最小安定性は、パレート効率性を「第三者による金銭移転が不可能である」ような状況へ拡張したPENSという概念と密接な関係があることも明らかにした。以上から、一連の研究成果は、完全競争市場が取引が生み出すパイを最大化する一方でそのパイを受け取る人数を最少化してしまう、という二面性をもった資源配分メカニズムであることを事実解明的(最小安定性)にも、規範的(PENS)にも示唆している。 リスボン大学における申請者の受入研究者であるPais氏とは、参加者たちに最初からパートナーがいるようなマッチング市場に関する理論研究を共同で行ている。基礎的な成果として、配分の望ましさに関する新たな概念を定義し、それらを満たす仕組み(アルゴリズム)を導くことに成功している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
最も多くの研究成果が得られている同質財市場の分析については、その内容を「経済学で考える市場を通じた分配の可能性」『法律時報』(2021年5月号)にまとめて出版した。また、【研究実績の概要】では直接触れていないものの、大学入試に関連したマッチング市場の制度設計に関する研究を「二種類の順位が混在するマッチング問題 中国大学入試制度の分析と改革」(方元駒さんとの共著)『オペレーションズ・リサーチ』(2022年3月号)として出版した。これらの英語論文も順調に改訂が進んでいる。 コロナの影響で、2021年度は残念ながらリスボンや近隣諸国での研究交流についてはほとんど進めることができなかった。しかしながら、2022年に入ってから対面でのイベントが徐々に復活している。3月29日にリスボン大学で開催された若手研究者を中心とするLisbon Micro Groupで研究報告を行い、主要結果に関する研究報告を行い多くの有益なコメントを得ることができた。共同研究者であるPais氏とも定期的に研究打ち合わせを行い、現在2つの研究プロジェクトを共同で進めており、こちらも順調に成果を得つつある。
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今後の研究の推進方策 |
6~8月にかけて欧州で開催される国際コンファレンス数件にすでに論文が採択されており、4~5か所で研究報告を行う予定である。そこでさまざまなフィードバックを受けるとともに、近い分野の研究者たちと交流を深め、秋以降のさらなる研究成果へとつなげたい。 共同研究者であるPais氏と進めている2つの共同研究プロジェクトのうち一つは草稿が完成し、2022年6月にイタリアで開催されるEconomic Designに特化した国際コンファレンスで報告する予定である。もう一方は経済実験を中心とした研究で、こちらは申請者が帰国する8月までに実際に実験に着手できるかやや不透明な状況である。ただし、帰国前に理論分析と実験を行う上での基礎的な準備や調整は完了できる見込みである。
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