研究実績の概要 |
自動車部品サプライヤの工場情報を用いて,どのような地域に立地しているサプライヤからイノベーションが生じやすいかを明らかにすることを目的とした。イノベーションに関わる知識洗練性の大きい自動車部品を製造するサプライヤは局所的に立地し,産業集積を形成する傾向があることを受け,国内サプライヤの産業集積の立地状況について分析を行った。GISを利用した地理分析を行うため,これまでの分析データに工場情報を補足したデータを整備した。分析では,GISを用いて地理空間上にサプライヤの立地を表すだけではなく,空間統計量を計測し知識洗練性と産業集積との関係を統計的に検証した。 分析結果より,空間統計量の大きさをもとに工場の立地状況を評価すると,製造する部品の知識洗練性の程度によって,サプライヤの生産拠点の分布や集積の範囲が異なっていることが判明した。知識洗練性が大きい部品を製造する工場については,そうでない部品を製造する工場に比較して,分散立地することなく狭い範囲に集積して立地する傾向が確認された。洗練性が大きくない部品を製造する工場の集積についても確認できるものの,知識洗練性の大きい部品を製造する工場分布と比較すると,より広域に分散している傾向が見られた。 さらに,調査資料に含まれている自動車部品メーカーによる自動車サプライヤの株式保有情報を追加したデータを用いて,サプライヤのイノベーティブな部品開発に自動車メーカーがどの程度影響があるかを分析した。 分析結果から,近年,自動車メーカーが株式を保有しているサプライヤからイノベーティブな部品が製造される傾向が大きいことが示され,知識ネットワークの形成に株式保有関係が関係していることが示唆された。
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