自動車メーカーと自動車部品サプライヤの関係性の大きさがイノベーティブな部品の製造に寄与しているかを明らかにすることを目的とした。自動車メーカに株式を保有されている自動車部品サプライヤからイノベーティブな部品が製造される傾向があることを受け,自動車メーカーと自動車部品サプライヤとの間の関係性と自動車部品のイノベーション創出について,二つの仮説を用いて検証した。一つは自動車メーカーが内部組織化した自動車部品サプライヤ(系列サプライヤ)による技術開発であり,もう一つは市場を通じた外部の自動車部品サプライヤからの部品調達である。分析では,自動車部品サプライヤの内部組織化の大きさについて,自動車メーカーの株式保有率データから測った。自動車部品のイノベーションの程度は,ネットワーク科学で用いられている複雑性指標をもとに計測した。さらに,経年変化を確認するため2期間のデータを整備し分析した。 分析結果より,自動車メーカーとともに内部組織化された系列サプライヤが製造している部品は他の部品に接続していることが多い(部品間の共通知識が多い)部品であることや,イノベーティブな部品であることが統計的に有意に示された。また,近年その傾向が大きくなっていることが明らかとなった。 つまり,自動車メーカーと自動車部品サプライヤの関係性が大きいこと,例えば自動車メーカーと系列サプライヤとの関係が維持されることにより,自動車部品に関する共有できる知識が増え,それら知識の組み合わせが豊富になることで自動車部品の技術開発が促されることが示唆された。
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