研究課題/領域番号 |
18KK0350
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
久保 慶一 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (30366976)
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研究期間 (年度) |
2019 – 2022
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キーワード | 移行期正義 / 戦争犯罪 / 裁判 / 計量テキスト分析 / セルビア / ボスニア / コソヴォ |
研究実績の概要 |
2021年度は、台湾・国立政治大学における研究滞在を8月6日まで実施した(2021年3月5日開始)。滞在中、共同研究者である同大学政治学系のEric Chen-hua Yu副教授をはじめ、同大学政治学系のChung-min Tsai教授やWan-ying Yang教授、Ching-ping Tang教授、Yen-pin Su准教授など、多数の政治学者と研究交流を行い、当プロジェクトの研究内容について多数の有益なフィードバックを得た。特に2021年4月12日には同大学の選挙研究センターにおいてサーベイ実験のデザインに関する報告を行い、Chi Huang教授、Lu-huei Chen教授、Eric Chen-hua Yu副教授をはじめ、同センターの研究員の方々から多くの有益なフィードバックを得ることができた。またセルビアの移行期正義をめぐる現地政治家・メディアの言説に関する計量テキスト分析については、2021年4月28日に中央研究院(Academia Sinica)で報告を行い、さらに2021年7月5日にはオンラインで実施した国立政治大学-早稲田連続研究セミナーの一環として研究報告を行い、オーディエンスから多数の有益なフィードバックを得た。この計量テキスト分析の成果は、2021年7月15日には世界政治学会(IPSA)世界大会でも研究報告を行い、その後は英文査読誌への投稿に向けて準備を進めた。また、ボスニアの移行期正義に関する計量テキスト分析において必要なボスニア国内の戦争犯罪裁判に関連するデータ(被告人の特徴、訴追日、判決日、判決内容など)を得るため、ボスニア・Vitez大学のGoran Simic教授と共同で、ボスニアの戦争犯罪裁判の結果に関するデータ収集を行い、2021年11月、戦争犯罪裁判データベースを公開した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
計量テキスト分析については概ね研究計画に従って進めることができ、2021年度は複数回の研究報告を実施し、英文査読誌に投稿する原稿を準備する段階に達した。この他にも、当科研の着想・方法論を活かし、計量テキスト分析を用いてセルビアの軍事的中立政策を分析する論文を執筆し、国際共著の書籍の一部としての刊行が決まっている(2022年刊行予定)。そのため、計量テキスト分析については概ね順調に進展していると自己評価する。しかし世論調査については、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う渡航規制や研究活動規制により、実施の準備を進めることができず、遅れが生じている。早稲田大学が契約しているオンラインサーベイ実施を請け負う民間調査会社Lucidがセルビアでの実施も可能との情報を得たため、Lucidのサンプルを用いたオンラインのサーベイ実施も検討したが、2021年度時点ではセルビアでは十分なサンプル数の確保が困難であることが判明した。そのため、世論調査については実施が困難な状況となっている。以上の理由から、全体としてやや遅れていると自己評価する。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルス感染症の拡大に伴って導入された渡航規制や研究活動の規制は徐々に解除されていく傾向にあるが、依然として予断を許さない状況である。さらに2022年2月にはロシアのウクライナに対する軍事作戦が開始され、ロシアへの渡航が困難となり、ロシア上空を通過できないことにより欧州諸国への航空路線のフライト時間が大幅に増加するなど、国際環境に急速かつ予測困難な変化が生じている。今後も新型コロナウイルスの感染状況や戦争などの危機の進展を注視し、研究計画を柔軟に変更することを視野に入れながら、研究活動の適切な遂行と研究成果の発信を進めていくことを試みたい。
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