本国際共同研究は、①研究対象、②概念、及び③成果発信の各側面において、基課題から格段に発展させ、東アジアにおける中高年人材の「プロアクティビティ」向上のメカニズム解明を目的とする。 2023年度(以降、今年度)は、本研究課題の最終年度であるため、これまでの活動で得られた知見の解釈、データの解析、及び成果発表を中心とする研究活動を行った。具体的な活動は以下の3点である。 第1に、収集した大規模定量サーベイのデータ解析を行った。複数の興味深い結果を得ることができたが、なかでもシニア人材の現在および将来の仕事やキャリアに対するプロアクティビティを高めるメカニズムの解明につながる実証結果を得ることができきた。4回の時系列調査データの構造方程式モデリングの結果、シニア従業員のHRM施策に対する帰属(経営者がなぜHRM施策を実施しているのかに関する従業員の知覚)が、シニアの感情状態にまず影響を与え、その感情状態が彼・彼女らの職業的未来展望を高める(低める)ことを通じて、現在の仕事へのエンゲイジメントと将来の定年退職後の就業継続意思の双方を高める(低める)ことが明らかになった。 第2に、本課題の国際共同研究機関であった台湾の名門大学・国立成功大学の研究グループと日本で国際学術交流ワークショップを開催した。このワークショップでは、上記の研究知見を含むこれまでの研究課題で得られた成果について発表を行うとともに、日本の企業事例を交えたシニア人材マネジメントのあり方について活発な議論を行った。 第3に、本課題で得られた研究成果の発表を積極的に行った。組織心理学研究において欧州で最も権威のあるEuropean Association of Work and Organizational Psychology (EAWOP)にて研究報告を行うなど、本成果の国内外への研究発信を積極的に行った。
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