研究実績の概要 |
昨年度までに収集した財政データを利用して、財政をめぐる国内政治と外交政策とのリンクをひもとく論文(鈴木(2023年))を出版した。本論文は、財政資源を利用した政府系投資機関のミスマネージメントや資金流用が国内での政治的争点となり、さらに損失の補填のために外国の政府機関が資金を提供する場合に、外交政策選択の自由度が、資金を提供する外国の意図によって狭められることを明らかにした。 また、同論文とSuzuki (2023) は、外交分野の論文であるものの、植民地期から独立期にかけて作られた自己イメージや国家のあり方が再生産される傾向にあることを指摘しており、植民地の遺制という観点で、本研究課題にとって意義のある成果となった。また、海外の共同研究者による共著論文(Dulay, Menon, Hichken and Holmes, 202; Dulay, Menon, Hicken and Holmes 2022) では、フィリピンの植民地期から1980年代までの歴史認識に関するサーベイデータに基づき、これが最新の大統領選挙の結果を説明することが明らかにされている。 2021年度に出版した新型コロナウィルスによるパンデミック下での財政分配に関するフィリピンとマレーシアの国家の比較研究は、海外の共同研究者とともに共著論文として執筆している。 なお、昨年度と同様、渡航制限やアーカイブの利用制限のために、海外出張によるデータ収集は断念せざるをえなかった。
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