本研究の目的は、外国籍者が在留資格や国籍に応じて階層化されるメカニズムの理論モデルを構築することにある。まず外国籍者の階層化がどのように生じているのかについての実証研究を、基課題で実施した調査データや本研究の中で実施したオンライン調査、国勢調査等の政府統計データの分析により実施した。その結果、在留資格による賃金差の多くは、雇用形態や勤める企業の規模・産業によって説明されるものの、技能実習に関してはそれでは説明されない賃金の不利が残ること、移住に伴う職業移動に国籍差があり、欧米籍者が有利な移動を遂げる一方、東南アジア・南米籍者は不利な移動を遂げていること、また、滞在が長期化しても階層移動がほとんど見られないことが明らかになった。これらの結果は、外国籍者の階層化が移住時点でどのような職に就くかによって決まっていることを示している。 また、採用にかかわった経験のある人を対象に、架空の就職希望者の採用可能性を尋ねるオンライン調査を実施し、国籍とエスニシティが採用可能性に影響を与えること、日本国籍/日本人のエスニシティが採用可能性を高める一方、中国籍/中国人であることが採用可能性を低下させることが示された。これは、現実には中国籍者の階層的地位が外国籍者の中では相対的に高いことと矛盾する結果である。つまり、外国籍者の階層化において、ある国籍/エスニシティに対する偏見では説明されないメカニズムが存在することを示している。 これらの結果から、外国籍者の階層化は、外国籍者本人の人的・文化的・社会関係資本の多寡や日本企業側の各求職者に対する差別からだけでは説明されず、国際的な不平等構造の中で、特定の国から特定の職に就く労働者を採用する採用ルートの形成パターンを組み込んだ説明モデルが構築される。これらの結果は、2023年度に開催される国際学会で報告の後、論文または書籍の一部として公表予定である。
|