研究課題/領域番号 |
18KK0360
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
川崎 昭如 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特任教授 (00401696)
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研究期間 (年度) |
2019 – 2021
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キーワード | 水災害 / デルタ |
研究実績の概要 |
本研究では、水害レジリエンス多次元分析モデルの構築を目的として、ハーバード大学 計量社会科学研究所(IQSS)地理解析センター(CGA)のグアン博士らとの共同研究を2019年8月より開始した。CGAは、中国史研究のボル教授が初代センター長を務め、空間情報技術による人文・社会科学系のデータ統合に関する知見と最先端の技術を有する世界有数の研究機関である。ボル教授をはじめ、アジア地域研究のアムリタ教授やCGAの研究者らと学際的議論を進めるとともに、ハーバード大学およびMITやボストン大学などの周辺大学での国際研究ネットワークの強化を進めるための活動を推進してきた。 2020年初頭までは、研究計画通りに順調に研究活動を進めることができたが、2020年2月以降の米国東海岸での新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の急速な拡大により、同年3月にボストンでの開催が予定されていた米国アジア学会(AAS)、さらにCGAおよびアジアセンターとの共催を予定していた本研究課題に関するシンポジウムが、ともに開催中止となった。これらの国際研究集会は本研究の共同研究者の巻き込みを加速する上で極めて重要な機会であったため中止となり残念であった。 2020年度はCOVID-19の拡大が続いたが、CGAでの在外研究を2020年11月まで実施した。この間、アジアのデルタ都市における水災害レジリエンスの分析モデル構築に向けた研究戦略を立てるとともに、現地で収集した資料やデータの分析や解釈について継続的に議論を進めた。また、CGAのグアン博士らとともに、歴史的資料や古地図、世帯訪問調査などの人文・社会科学系の資料と、社会・経済統計データ、衛星画像やGISデータなどの多様な情報やデータ、モデルの統合分析に関して、最新の空間情報技術に関する知見と助言をいただきながら着実に研究開発を進めることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度は米国でもCOVID-19の拡大が続いたが、CGAでの在外研究を2020年11月まで実施することができた。この間、アジア地域研究のアムリタ教授とともに、インドやミャンマーなどのデルタ都市における水災害レジリエンスの分析モデル構築に向けた研究戦略を立てるとともに、現地で収集した資料やデータの分析や解釈について継続的に議論を進めた。また、CGAのグアン博士や研究者らとともに、歴史的資料や古地図、世帯訪問調査などの人文・社会科学系の資料と、社会・経済統計データ、衛星画像やGISデータなどの多様な情報やデータ、モデルの統合分析に関して、最新の空間情報技術に関する知見と助言をいただきながら着実に研究開発を進めることができた。 人文・社会科学データの統融合を具現化する一つの研究成果として、世帯訪問調査(Household Interview Survey: HIS)資料と高空間解像度衛星画像を使って、途上国での貧困層の分布を建物単位で推計することを目的とした深層学習技術を開発した。これにより、これまで主に人文・社会科学系を中心に長年に渡り、地上で1軒1軒を訪問し人手をかけて収集してきたHIS資料と、宇宙から広域に撮像する高空間解像度衛星画像、さらに GISによる近接情報(地理や地形条件)を統合的に分析することで、建物単位での貧困層の分布を推計できる可能性を示した。本手法は、デルタ都市における社会経済活動の水害脆弱性を評価する際などに有効である。
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今後の研究の推進方策 |
米国東海岸での新型コロナウイルス感染症(COVID-19)収束時期の予測できないため、現地での活動の見通しを立てるのが難しい状況であるが、COVID-19の状況次第では、ハーバード大学計量社会科学研究所(IQSS)地理解析センター(CGA)を再訪して、引き続き、CGAの研究者らとともに本研究課題の各種シミュレーションやモデル化のためのデータ記述や格納の方法や新たな枠組みについての議論を継続したり、関連のワークショップなどに参加することを計画している。さらに、一昨年度に企画していたハーバード大学でのシンポジウムを開催するとともに、アメリカ地球物理学連合(AGU)秋季大会など米国内で開催される主要国際会議での成果発表と情報収集、および国際的研究ネットワークを強化する活動を可能な限り推進したい。また、これまで共同研究を進めてきたハーバード大学のアムリタ教授がイェール大学へ異動したため、イェール大学を訪問することも予定している。
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