研究課題/領域番号 |
18KK0361
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
陣内 了 一橋大学, 経済研究所, 准教授 (50765617)
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研究期間 (年度) |
2019 – 2021
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キーワード | 資産価格バブル / 経済成長 |
研究実績の概要 |
2019年度は、本研究プロジェクト全体の核となる理論モデル、すなわち「繰り返しバブル」を取り込んだ経済モデルを様々な角度から分析して理解を深めた。Princeton University、Boston College、Royal Holloway, University of Londonにそれぞれ渡航し、研究協力者と連携しつつ研究を進めた。 その結果、これまでの資産価格バブルに関する研究ではあまり注目されてこなかった資産価格バブルに関連する新たなコストを見つけた。それはすなわち、将来の資産価格バブル発生が予見されると、その「富効果」を通じて現在時点における投資や労働供給が押し下げられ、経済成長が鈍化するというコストである。これが経済厚生を押し下げる新たな要因となることが分かった。 技術的な成果として、レジーム転換モデルという手法を使って資産価格バブルが発生と崩壊を繰り返す環境の分析が可能になることを見つけた。内生成長モデルを使う事で、分析がさらに簡単になることも見つけた。 繰り返しバブルの元で、資産価格バブルが経済成長や経済厚生に与える影響も分析した。具体的には資産価格バブルが経済に取って良くなるのはどのような場合かを調べた。その結果、資産価格バブルが望ましい経済とは、金融市場が未発達な経済であり、そのような場合、資産価格バブルの発生頻度も高いほど望ましい傾向があるという興味深い結果が得られた。開発した理論モデルと、米国の資産価格とGDP成長率のデータを使って、過去数十年に米国において資産価格バブルが発生していた確率も推定した。得られた結果を国内外の学会やセミナーで報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度は、おおむね予定していたスケジュールで理論モデルの開発を進めることが出来た。また、理論モデルと実際のデータを用いて、米国において資産価格バブルが発生していた確率を推定して結果も得たため。さらに、得られた結果を論文の形にまとめることが出来た。得られた研究成果を国内外の学会やセミナーで発表することも出来た。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに得られた研究成果を論文にまとめて、学術誌に投稿することを目指す。一方、COVID-19の感染拡大が、研究計画に与える影響を懸念している。具体的には、今後、渡航時期や渡航期間の計画を変更せざるを得ない可能性がある。研究協力者と密に連絡を取り、遠隔で研究の打ち合わせを行ったり、必要があれば渡航時期をずらしたりするなどして、可能な限り、当初の研究計画を達成出来るように備える。国内外の学会や研究集会で研究成果を発表するとともに、研究内容に関しては理論分析をさらに深化させ、実証分析の対象も米国以外のデータに広げることを計画している。
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