研究課題/領域番号 |
18KK0361
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
陣内 了 一橋大学, 経済研究所, 准教授 (50765617)
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研究期間 (年度) |
2019 – 2022
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キーワード | 資産価格バブル / 経済成長 / 景気循環 |
研究実績の概要 |
2020年度に引き続き、2021年度もプロジェクト全体の核となる「繰り返しバブル」を取り込んだ経済モデルの分析を進めた。資産価格バブルの新たな負の側面を見つけた。すなわち、将来の資産価格バブル発生が予見されると「富効果」が生まれ、それが現在時点において投資や労働供給を押し下げ、経済成長を鈍化させるというメカニズムに起因する経済厚生上の損失である。この視点は、既存の資産価格バブルに関する研究では注目されていなかった。このコストを様々な角度から検討して理解を深めた。経済厚生上の損失を定量的に測ることを可能にする経済モデルを開発し、米国の資産価格とGDP成長率のデータを使って過去数十年に米国において資産価格バブルが発生していた確率を推定し、バブルがマクロ経済に与えた影響も推定した。
モデルの内生変数が解析的に特徴付けられる特殊ケースを考え、その環境におけるモデルの挙動を分析した。そこで得られた定性的な結果はパラメータの値の決め方によらないため、結果の頑健性がより強く主張できるようになった。いくつかの重要な結果は定理としてまとめた。これまでに得た結果に新規の結果も加えて論文を執筆し、国際的に定評のある学術雑誌に投稿した。
2020年度までに取り組んでいた研究成果の一部は、国際的に定評のある学術誌に掲載が受理され、出版社のウェブサイトからオープンアクセスで公表された。また、日本の家計異質性に関するサーベイデータを調査する中で、インフレ予測と消費行動に関する興味深い知見を得たため、論文にして国内の査読付き学術誌に発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度もCOVID-19の感染症拡大に伴う渡航制限により、予定していた海外渡航が実施できなかった。制約のある中で研究協力者とはオンラインによるミーティングを積極的に行い、研究を進めることに努めた。
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今後の研究の推進方策 |
渡航制限の緩和度合いや各国の感染状況を注視し、往来が可能な状況になり次第Princeton University、Boston College、Royal Holloway, University of Londonに渡航して研究協力者と直接会って研究の打ち合わせを行い、プロジェクトの遂行に努める。渡航制限がある場合は遠隔で研究打ち合わせを行い、可能な限り当初の研究計画を達成することが出来るように努力する。
これまでに得られた研究成果を発表する。論文にまとめて学術誌に投稿し、国内外の学会や研究集会で研究成果を発表する。
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