紛争後社会で環境資源を管理するにあたり、伝統的ガバナンスが効果的に機能するための方策を分析することが、本研究の目的である。環境政策の議論では、「生物多様性戦略計画2011-2020及び愛知目標」(2002年採択)においても、「伝統的知識が尊重され、主流化される」ことが目標として定められる等(目標18)、資源管理のために伝統的制度に基づくガバナンスを見直す動きがある。紛争後の状況において、伝統的制度が様々な機能を持っていることを観察し、学術関係者や政府関係者等との議論を重ねてきた。そして、紛争後社会における伝統的ガバナンスに関する法政策と適用事例を検証してきた。 インドネシアにおいては、国内法と地域社会における慣習法が併存しており、地域社会の慣習法が尊重されることが国の法律で定められている。その領域内における多元性を寛容に受け入れる法多元主義(legal pluralism)に基づく立ち位置がとられている。この点は独立後にとられた多くの法制度に反映されている。 そこで、インドネシアにおいて、ウダヤナ大学と協力し、フィールド調査を実施し、伝統的ガバナンス、伝統文化、伝統組織と農業に関する政策、適用されている事例、その実態について調査できた。特に、地方自治体、大学、NGO、村落組織、農業組織、住民組織の関係者、農家、伝統的グループ等に対しインタビュー調査を行い、異なる視点からの有益な情報を聞き取ることができた。コミュニティとのアクション・リサーチも実施し、伝統的ガバナンスに影響を与えている制度・要因、対応策について調査分析できた。そして、国際会議の招聘を複数回受け、これまでの研究成果を発表することができた。
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