研究課題/領域番号 |
18KK0364
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
玉田 大 神戸大学, 法学研究科, 教授 (60362563)
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研究期間 (年度) |
2019 – 2021
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キーワード | 国連海洋法条約 / 紛争解決 / 管轄権 / 附属書VII仲裁 / 受理可能性 / 国際司法裁判所 |
研究実績の概要 |
2019年度は海外渡航の準備をしていた。渡航先としては、ロンドン大学クインメリー校が決まっており、受入れ教員として、Malgosia Fitzmaurice教授との打ち合わせを進めていた。また、受入れ先において、招聘教授(visiting professor)の手続も終了しており、諸々の手続が順調に進んでいたと言える。他方、3月からコロナウィルス感染の拡大に伴い、渡航自粛と渡航禁止が発出されたため、4月から開始予定であった渡英計画はいったん延期せざるを得なくなった。大変残念ではあるが、こうした状況であるため、現在(2020年4月)においても将来的な計画を立てることが大変困難である。ただし、研究内容自体は、海外渡航にかかわらず、順調に進めている。 第1に、2019年度は、渡航前の準備として、国連海洋法条約の紛争解決手続における客観訴訟の可能性について検討し、学説・判例を整理している。また、その内容について、議論の全体像を示すための論文を発表することができた。また、国際的なワークショップにおいて、日本が再開した商業捕鯨を巡る問題を扱い、その中でも、商業捕鯨を巡る国際裁判の可能性(客観訴訟)について論じた。こうした議論において、国連海洋法条約上でも客観訴訟の可能性が高いという点を指摘している。 第2に、国連海洋法条約において初となる強制調停事件(東チモール/豪)についても分析を進めた。調停報告書自体は2018年に公表されたものであるが、これを2019年度に時間をかけて読解・分析したところ、極めて興味深い論点が見つかった。内容は今後公表予定であるが、裁判・仲裁手続とは異なり、調停においては法(海洋法条約)の適用をいったん排除し、紛争当事者間の合意形成を目指すという特殊な紛争解決メカニズムが用いられている。この点は、強制調停における強制的管轄権設定との関係で、理論的にも丁寧な分析を要する点と思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本来、海外渡航をし、海外の研究機関において共同研究を行う予定であったが、コロナウィルス感染拡大を受け、海外渡航自体が延期となっている。また、先の見通しが立たず、次の渡航時期をいつにするかも定まっていない状況である。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度の間に、海外渡航計画を練り直す必要がある。特に、受け入れ先機関における身分(招聘教授)やビザ申請は、振出しに戻った状態であり、渡航予定日との関係で多くの調整を要する。そのため、恐らく再渡航は2021年度にずれ込むのではないかと予想している。 なお、研究の中身自体については、引き続き、国連海洋法条約に関する判例を中心に分析を進め、管轄権及び受理可能性についての判例動向を見定め、論じるべき論点を抽出する作業を行う予定である。
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