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2019 年度 実施状況報告書

性的侵害行為の刑事法的規制を巡る包括的スキームの構築

研究課題

研究課題/領域番号 18KK0369
研究機関立教大学

研究代表者

深町 晋也  立教大学, 法務研究科, 教授 (00335572)

研究期間 (年度) 2019 – 2021
キーワード性犯罪 / 児童に対する性的虐待 / 性刑法
研究実績の概要

2019年度の研究実績については、①ドイツ語圏各国における性犯罪改正の動向を調査すること、②ドイツ語圏各国の議論状況と比較しつつ、我が国の性犯罪規定の現状について分析・紹介することの2点に分けることができる。
①については、ドイツ刑法における性犯罪規定に関して、2016年に極めて大きな改正がなされた後も、体系的・包括的な全面改正の試みがなされたが、依然としてそうした全面改正は実現しておらず、性犯罪の各犯罪類型で幾つかの改正が行われている。その中でも、いわゆるCyber Grooming(オンライン上で性的意図に基づき児童にコンタクトを取る行為)に関して、捜査官が児童に成りすまして行為者からのコンタクトを受けた場合には未遂犯が成立しないところ、特別な未遂処罰規定を設けるための法案につき、公聴会で参考人として意見を述べたケルン大学のThomas Weigend教授にインタビューを行い、本法案の問題点などを聴取した。また、いわゆる「盗撮」に関して、ドイツで現在進行している新たな処罰規定の創設を巡る議論動向を調査し、分析した。更に、スイス刑法の性犯罪規定の改正動向に関してチューリヒ大学のChristian Schwarzenegger教授に、また、オーストリア刑法の性犯罪規定の改正動向に関してウィーン大学のAlexander Tipold教授に、それぞれインタビュー及び意見交換を行った。
②については、ドイツ語圏と日本における性犯罪規定の比較分析を行った論文を、チューリヒ大学のChristian Schwarzenegger教授還暦記念論文集において公表した。また、コンスタンツ大学のLiane Woerner教授の招待を受けて、同大学でドイツ語圏と日本における性犯罪規定を比較分析した講演を行った。更に、海外共同研究者であるBettina Weisser教授の協力の下、ケルン大学のセミナーにおいて、同趣旨の内容の報告を行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究においては、在外研究期間中に、①ドイツ語圏の性犯罪規定の改正動向に関する基礎的な研究調査を行うこと、②ドイツ語圏及び我が国の性犯罪規定に関する比較分析の成果をドイツにおいて公表すること、の2点を計画していたところであるが、そのいずれについても相当程度の成果を挙げることができ、概ね順調に進展しているものと評価できる。
①に関しては、ドイツ刑法の性犯罪規定に関する2016年の改正がもたらした実務・学説への影響を調査し、我が国における性犯罪規定に関する現状と比較しながら分析することを目的としていたが、基礎的な文献調査の他、様々なインタビューを実施した結果、その目的の多くが達成された。また、2016年以降の性犯罪規定の改正、特にCyber Grooming罪の特別な未遂処罰規定の導入については、連邦政府の草案や公聴会の議論、参考人へのインタビューなどを通じて大幅に研究が進展した。また、「盗撮」を巡る新たな処罰規定の創設を巡る議論動向についても調査を相当程度行うことができた。更に、スイス刑法及びオーストリア刑法における性犯罪規定の改正動向に関する調査研究についても、相当程度に進展した。
②に関しては、ドイツ語での論文公表、及びドイツの大学での招待を受けた講演やセミナーでの報告を行うことで、ドイツ語圏各国と我が国における性犯罪の比較研究のための基盤を整備し、かつ、一定の成果を示すことができた。他方で、本来予定されていた、別のドイツの大学における招待講演については、COVID-19のエピデミックに伴うドイツ・NRW州の大学封鎖に伴って中止されることになり、計画の一部が履行できない状況となった。この点も考慮すると、研究は概ね順調に進展していると評価されることになる。

今後の研究の推進方策

2020年度については、本来予定されていた、ドイツ語圏各国における性犯罪研究の専門家の日本における招待講演の多くについて、COVID-19のパンデミックを理由として延期又は中止せざるを得ない状況にある。したがって、これらの研究交流については、その多くを2021年度に延期することを予定している。我が国においては、2017年6月に刑法典の性犯罪規定が大きく改正され、3年後である2020年に見直しが予定されているところ、2020年度にこうした招待講演を行うことができないのは研究計画における大きな後退であるが、今般の状況に鑑みればやむを得ない決断であると判断した。
他方、2020年度においては、2019年度に行ったドイツ語圏における性犯罪規定に関する調査研究を更に進展させることも計画していたが、こうした調査研究を元にした論文執筆・公表に重点を置くことにする。2020年度には、性犯罪の比較法的検討を行った共著の書籍を公刊することを計画しており、現時点で既に相当程度進捗している。ドイツにおける海外共同研究者とも連携を取りつつ、2020年度後半あるいは2021年度において、ドイツにおける短期の在外研究を行うことも予定している。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2020 2019

すべて 雑誌論文 (2件) (うちオープンアクセス 2件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] 家族と刑法・ドイツ番外編(第1回)妊婦が妊娠中絶に関する情報に接するとき2019

    • 著者名/発表者名
      深町晋也
    • 雑誌名

      書斎の窓

      巻: 666号 ページ: 24-34

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] Ueber die neuen Entwicklungen des Sexualstrafrechts in Japan2019

    • 著者名/発表者名
      Shinya Fukamachi
    • 雑誌名

      ContraLegem

      巻: 特別号 ページ: 219-227

    • オープンアクセス
  • [学会発表] Ueber die neuen Entwicklungen des Sexualstrafrechts in Japan: Im Vergleich mit den deutschsprachigen Laendern2020

    • 著者名/発表者名
      Shinya Fukamachi
    • 学会等名
      Vortrag an der Universitaet Konstanz
    • 招待講演
  • [学会発表] Ueber die neuen Entwicklungen des Sexualstrafrechts in Japan: Im Vergleich mit den deutschsprachigen Laendern2020

    • 著者名/発表者名
      Shinya Fukamachi
    • 学会等名
      Japanisch-Deutsches Kolloquium fuer junge Strafrechtswissenschaftler
  • [図書] Strafrecht Zwischen Ost Und West (「Internetstrafrecht in Japan. Zur Strafbarkeit der Verbreitung rechtswidriger Inhalte im Internet」(Shinya Fukamachi))2019

    • 著者名/発表者名
      Eric Hilgendorf/Makoto Ida/Takuma Sato/Shinya Fukamachi
    • 総ページ数
      246(157-168)
    • 出版者
      Mohr Siebeck
    • ISBN
      978-3-16-158279-0

URL: 

公開日: 2021-01-27  

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