研究課題/領域番号 |
18KK0371
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研究機関 | 中京大学 |
研究代表者 |
埴淵 知哉 中京大学, 国際教養学部, 教授 (40460589)
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研究期間 (年度) |
2018 – 2020
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キーワード | マルチレベルデータ / 地域調査 / 系統的社会観察 / クラウドソーシング / ポートランド |
研究実績の概要 |
本研究は、個人と地域の情報を併せもつ「地理的マルチレベルデータ」構築の可能性を、国際共同研究を通じて発展させることを目的としている。具体的には、米国におけるデータの構築・公開の先進的な状況を調査・把握すること、および、クラウドソーシングによる社会・地域調査法を日米で試行し国際比較を進めることを計画している。今年度は、外国機関(米国・ポートランド州立大学)に11カ月間滞在し、共同研究を集中的に進めた。まず米国における社会調査およびGIS(地理情報システム)関係の空間データの公開状況について、ポートランドを中心に実態を把握した。また、ポートランド州立大学およびオレゴン州立大学において、地理学および都市計画・交通計画、環境疫学などの専門家に聞き取りをおこない、地理的マルチレベルデータの構築と利用における課題の把握に努めた。そして、ポートランド市全域を対象とした系統的社会観察をクラウドソーシングを通じて実施し、街路の歩行環境や景観要素を広域的に測定した。従来、コストの制約によって狭いエリアのみで実施されていた同調査法に対して、クラウドソーシングを応用することで範囲の拡大を実現するとともに、複数時点の景観写真を利用することで都市環境の変化を捕捉することにも成功した。また、日米の評価者の比較を通じて、国際比較研究における同手法の高い信頼性を確認するとともに、ローカルな景観要素に対する柔軟な項目の設定や、調査結果の地図によるビジュアライゼーションについても共同研究を進めた。主要な結果を2020年3月の日本地理学会で報告(現地での大会開催は中止)し、今後の論文化の方向性を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定どおり2019年4月から米国に渡航し、ポートランド州立大学の研究者との国際共同研究を集中的に実施できたため。都合により当初予定よりも一カ月早い帰国となったが、オンラインでのやり取りを通じて問題なくその後の研究を継続できた。
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今後の研究の推進方策 |
本国際共同研究における調査部分は概ね完了した状態にあるため、今後は収集したデータの分析・解釈等をさらに進め、結果を論文としてまとめることに注力する。主な分析内容としては、(1)日米の評価者による系統的社会観察の信頼性の検討、(2)クラウドソーシングを利用することによる時間的・費用的コストの削減度の検証、(3)地理的マルチレベルデータを構成する地域データとしての有効性の検討、(4)複数時点のデータの組み合わせによる都市景観変化の分析などが挙げられる。これらについて、共同研究者との継続的な議論を通じて論文化を進め、国際誌に公表する予定である。国際比較をさらに進めるために、必要に応じて再度現地を訪問したり、海外共同研究者を日本に招へいすることも予定している。ただし現時点では新型コロナの終息時期が不透明であるため、オンライン会議での代替準備も並行して進める。
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