研究課題/領域番号 |
18KK0373
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研究機関 | 立命館アジア太平洋大学 |
研究代表者 |
吉川 卓郎 立命館アジア太平洋大学, アジア太平洋学部, 教授 (30399216)
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研究期間 (年度) |
2019 – 2021
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キーワード | 政治学 / アイデンティティ / 民族 / 部族 / 国家‐社会関係 / イスラーム / 国際関係 / 安全保障 |
研究実績の概要 |
1.基課題と並行した研究の推進 本研究の基課題となる基盤(C)「アラブ王制持続の総合的研究 ヨルダン・ハシミテ王国とその周辺空間を巡って」の研究が完了したことで、左記成果を土台に、本研究に集中できる環境が整った。基課題の最終成果物である単著『ヨルダンの政治・軍事・社会運動-倒れない王国の模索』(晃洋書房より2021年2月に刊行)には、本研究の2019年度現地調査の成果(2019年8~9月・ヨルダン首都および南部、英国国立公文書館)の一部である、ヨルダン建国期の部族の役割に関する資料・史料分析、ヨルダン現代政治への論考が反映されている。 2.2020年度の現地調査に向けたパイロット調査 先述の2019年度調査の結果、(1)2020年度のヨルダンにおける研究体制および拠点の確保、(2)基課題を含めた研究関連の文献調査・収集(上記1.の成果に反映済み)、(3)本研究課題を軸とした英文図書の刊行計画の策定、という方向性を見いだすことができた。2.(1)ではヨルダン大学国際学部の客員研究員資格が認められ(2020年3月)、2020年6月より、同大学を拠点に、共同研究者であるムハンマド・エイエダート博士と調査・研究を進められる見通しが立った。また(3)については、2019年度調査において、エイエダート博士と協議のうえ、ヨルダン王国の存立基盤に関する、部族社会を含む広範な内容を網羅した学術書(英語)刊行を目指すことで合意した。 3.先行研究を含む関連研究の文献調査 数少ないヨルダンの部族社会に関する先行研究の精査を進めた。これによって、2020年度のヨルダン渡航時においての調査・分析課題が明確になった。以上に述べた1.~3.の成果と課題を踏まえ、現地調査を軸にした20年度の研究を遅滞なく進めたいと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
先述の通り、2019年度は予定通りに基課題と並行した研究を推進し、その成果物(単著)についても2020年度内の刊行が確定した。また現地調査に際し、ヨルダンにおける重要な調査拠点2か所のうち、ヨルダン大学での2020年度調査拠点の確保ならびに同大学の共同研究者との2020年度研究計画の策定を済ませた。マアーン市の拠点についても、2021年度の本格的な調査を円滑に行うべく、手続きを進めておきたい。2019年度初頭に提出した研究実施計画では実施期間中の国際学会発表を明記しているところ、2020年度開催の学会、4th Annual International Conference on Social Sciences(AICSS2020。2020年4月。トルコ・イスタンブール市)、Middle East Studies Association (MESA)年次大会(MESA 2020.20年10月。米国・ワシントンD.C.)への発表を申し込んだ。このうち、2019年度中にAICSS2020での発表が受理され、ペーパー(ヨルダンの社会勢力が2010年代に果たした政治的役割に関する分析)も提出済である。MESA2020については、提出したプロポーザル(ヨルダン政治体制の強靭性に関する分析)の受理・不受理が5月中に通知される見込みであるが、同学会プログラムは本研究課題に大きく関連するため、上記の結果にかかわらず参加したいと考える。ただ残念なことに、COVID-19の世界的な感染拡大によって、AICSS2020は延期となり、再開の目途も立っていない。幸い、提出したプロポーザルとペーパーの受理状況は変わらないため、新規日程に向けて準備を進めたい。以上述べたとおり、2019年度の研究は概ね順調に進展しているが、既にCOVID-19の影響も少なくないため、より堅牢な研究の遂行を心掛けたい。
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今後の研究の推進方策 |
1.ヨルダンでの現地調査 当初は2020年6月の現地渡航を予定していたが、COVID-19感染拡大の影響により、本報告時点でヨルダンの国境が閉鎖されている。同国内では厳しい移動制限が続いており、実施の先送りは避け難い。状況が改善し安全が確認され次第、速やかに現地入りし、ヨルダン大学国際学部を拠点に、当初研究計画に沿った調査の遂行に集中する。 2.研究発表と論文の執筆 先述の国際学会AICSS2020とMESA2020についての今後の開催見通しは、COVID-19の影響に左右されるとはいえ、いつ開催されても対応できるよう、準備を進める。上記以外にも、国内外の学会や研究会等、本研究に関する発表や意見交換の場があれば、最大限に機会を生かす。また、冒頭理由により、2020年度上半期の国内外学会も多数中止となったため、これらに向けたエフォートを、執筆活動の強化に振り向ける。具体的には、基課題(基盤(C))の最終成果物(図書)への、本研究からの一層の成果反映(校了の2020年8月まで)を推進する。同時に、2019年度の成果の一部を、2020年度内に英字・査読付きジャーナルへ投稿する。投稿先は、刊行までの期間の短さ、読者数・広報効果の大きさに鑑み、オンラインでアクセスフリーのジャーナルを優先する。 3.英語学術書の刊行に向けた努力 以下の取り組みを推進する。(1)図書出版計画に沿った研究会の実施:共著者のエイエダート博士と、図書のコンセプト・分析枠組・分担体制等に関する研究会を、ヨルダン大学にて複数回実施する。(2)図書の共著者・寄稿者獲得に向けた会議の実施:国際共同研究を推進する観点からも、日本、ヨルダン、アジアの若手研究者らとの研究会・会議を国内ないしは近隣諸国にて催す。(3)出版社との交渉:大手学術出版社との接触・企画を推進する。以上1.~3.をもって、2020年度の推進方策としたい。
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