研究課題/領域番号 |
18KK0373
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研究機関 | 立命館アジア太平洋大学 |
研究代表者 |
吉川 卓郎 立命館アジア太平洋大学, アジア太平洋学部, 教授 (30399216)
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研究期間 (年度) |
2019 – 2022
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キーワード | ヨルダン政治 / 安全保障化 / 社会運動 |
研究実績の概要 |
2020年度の後半から取り掛かっていたヨルダン政府による国内社会勢力への安全保障化(セキュリタイゼーション)の研究を論文としてまとめ、投稿した。拙稿は英字ジャーナルContemporary Review of the Middle Eastに受理され、2021年5月に刊行された。 2020年初頭よりヨルダンで続いたCOVID-19感染拡大を理由とした都市部のロックダウンや社会運動の活動停止は、同国の社会運動に深刻なダメージを与えた一方、オンラインでの活動への移行を促した。この点に注目し、2021年度を通じて、デジタル化された権威主義と社会運動の関係について、伝統的な社会勢力である部族やイスラーム主義組織から匿名のSNS投稿まで、幅広い考察を行った。初期の分析については韓国中東学会(KAMES)の年次大会向けペーパーにまとめ、2021年9月に発表を行った。この時のフィードバックを元に、内容を修正したペーパーを同年11月の米国の中東アフリカ学会(ASMEA)で発表した。上記で得た知見をもとに学会ペーパーを論考として発展させたものを『中東研究』に投稿し、2022年1月に刊行された。 現地のCOVID-19変異株流行等、感染状況が改善しなかったため、2021年度末に予定していた現地調査は残念ながら見送りとなった。しかし、新たな研究パートナーであるヤルムーク大学のバニ・サラメ教授との複数の共同研究が順調に進行しており、研究の1つについては2022年10月に予定される日本国際政治学会への発表を申し込んだ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度は、成果物という点では順調に推移した。一方、現地協力者であるヨルダン大学のエイエダート教授らと本研究課題に関連した英文による共著単行本の出版に向け準備を進めてきたところ、複数の学術出版社から出版を断られた。この時のアドバイスに基づき、内容、章立て、全体のボリュームの再検討を進めている。 また、現地でのCOVID-19感染の蔓延が続いたことから、2021年度全体を通じて現地での調査が実施できなかった。この問題については「研究実績の概要」にも書いたように学会発表や論文刊行に注力することで補ったものの、本研究課題の軸は現地調査であるため、全体のスケジュールに遅れが発生している。この点は、現地協力者からもフィールドワーク実施の難しさが報告されており、2022年度に向けての課題となっている。
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今後の研究の推進方策 |
「研究実績の概要」にも記したとおり、バニ・サラメ教授との共同研究は当初予想よりも早く進んでいる。そのため、当初の予定になかった共著論文や単行本の執筆を視野に、研究協力の加速を目指したいと考えている。同教授との研究において現地調査が一定規模のウエートを占めているので、2022年度は、可能な限りヨルダンでの調査やインタビューへの時間を取りたい。この点はエイエダート教授らとの研究でも同様で、最終年度の2022年は可能な限り現地入りの時間を増やし、本研究課題の総括に向けて努力したい。
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