研究課題/領域番号 |
18KK0375
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
橋本 顕一郎 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 准教授 (00634982)
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研究期間 (年度) |
2019 – 2021
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キーワード | 電荷ガラス / 走査型近接場光顕微鏡 / 誘電ノイズ測定 / 有機導体 / 幾何学的フラストレーション |
研究実績の概要 |
近年、物性物理学の分野において、有機固体結晶中の伝導電子が、強い電子相関と幾何学的フラストレーション効果により、ランダムな電荷分布・電荷配置のまま凍結した電荷ガラス状態が見出され、大きな注目を集めている。電荷ガラス状態では、巨大非線形伝導や負性抵抗領域における自発的電流振動現象などが観測されており、X線構造解析から示唆されるナノクラスター電子構造との関連性が議論されている。しかし、ナノメートルサイズの電荷クラスターを実空間で直接観察した例はない。そこで本研究では、電荷ガラス物質における「非自明な巨大非線形・非平衡応答」と「実空間でのナノクラスター電子構造」の関係を明らかにすることを目的として、国際共同研究のもと、走査型近接場光顕微鏡および走査型局所誘電ノイズ測定を行い、電荷ガラス状態における電子構造のナノスケール実空間観察から、強相関電子系における電子相関を起源とした本質的不均一構造がもたらす非自明かつ巨大な非線形・非平衡現象の物理的起源を解明することを目指している。 当該年度は、ドイツのフランクフルト大学に1ヶ月間滞在し、電荷ガラス物質θ-(BEDT-TTF)2MZn(SCN)4 (M = Rb, Cs)のノイズ分光測定を行った。その結果、一連の電荷ガラス物質において、この系特有の遅い電荷ダイナミクスを観測することに成功した。また、ドレスデン工科大学において、電荷ガラス物質の走査型近接場光顕微鏡実験の予備測定を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該年度は、AFMも用いた走査型局所誘電ノイズ測定の開発を行い、電荷ガラス状態における電子構造のナノスケール実空間観察を行う予定であったが、装置開発の遅延があるため、やや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、ドレスデン工科大学に短期滞在し、電荷ガラス物質θ-(BEDT-TTF)2MZn(SCN)4 (M = Rb, Cs)の単結晶薄膜に対して、電圧印加を印加した状態で、査型近接場光顕微鏡(SNOM)測定を行い、電子状態の実空間マッピングを行い、電圧印加によりどのように電荷ガラス状態におけるナノスケールヘテロ構造が融解し、巨大なスイッチング現象が生じるのかを明らかにする。 また、フランクフルト大学では、AFMを用いた局所誘電ノイズ測定の立ち上げを行い、AFMを用いた走査型局所誘電測定システムを構築する。
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