研究課題/領域番号 |
18KK0376
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
岡本 敦 東北大学, 環境科学研究科, 准教授 (40422092)
|
研究期間 (年度) |
2019 – 2021
|
キーワード | 岩石組織 / マルチスケール / ナノ構造 / 空隙 / 岩石ー流体相互作用 / X線CT / 水熱実験 |
研究実績の概要 |
国際共同研究である本課題では、ユトレヒト大学などにおいて、変成岩、蛇紋岩、鉱物脈や室内実験による生成物のナノスケールの組織解析を行う中で、固体地球内部の岩石ー流体相互作用における階層的な反応・物質移動のプロセスのモデル化を行う。その中で、本年度は、7月に交付申請を行なったのち、分析試料の収集、作成と、共同研究の準備を進めた。 渡航の準備については、9月にユトレヒト大学の共同研究者の研究室を訪問し、ナノスケールの構造を解析する電子顕微鏡などの分析装置を見せてもらい、共同研究についての具体的な打ち合わせを行った。その際、プレート境界条件で蛇紋岩が脱水してかんらん石が形成する組織や、蛇紋岩が炭酸塩化する組織、シリカ析出組織などについての詳細な分析を行うことなどの計画を綿密に立てることができた。また、カールスルーエ工科大学へも訪問し、シリカ析出実験についての共同研究についての打ち合わせを行った。 国内においては、超臨界流通式実験装置によって、玄武岩ー海水の変質実験と、シリカ析出実験を進めた。とくに、シリカ析出実験においては、シリカ粒子が流路に沿って順次、大きく成長し、また、アモルファスからクリストバライト、石英へと変化する様子を見出した。また、高エネルギー加速器研究機構において、ナノX線CTとXAFSを用いた蛇紋岩の分析という研究課題が採択され、オマーン陸上掘削プロジェクトによって採取された地殻ーマントル境界の蛇紋岩のナノスケールの分析を試み始めている。これは、国際共同研究との相乗効果が期待できる。そのほかにも、高温変成岩のナノポア構造、脱水した蛇紋岩の実験生成物と三波川帯の蛇紋岩の解析、三波川帯の断層岩の分析など、共同研究につながる岩石試料の準備が進められた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実際にユトレヒト大学で共同研究者の実験室を訪ねて、分析装置などを見せてもらうことによって、より具体的な計画を立てることができた。こちらの準備は、実験生成物、天然の変成岩など準備が進んでいる。また、高ネネルギー加速器研究機構の放射光施設のビームタイムが採択されたために、国内でもナノ組織の解析が進めることが可能となり、相乗効果が期待される。したがって、概ね順調に進展している、といえる。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度は5月から11月の間、ユトレヒト大学に滞在し、分析を行う予定である。また、その期間のなか、1週間程度、カールスルーエ工科大学を訪問し、共同研究を進める予定も計画している。ただ、現実的には、新型コロナウィルスの影響により、渡航期間が変更を余儀なくされることが予想され、臨機応変に国内で進められる部分は進めていきたいと考えている。具体的な分析の予定は以下のとおりである。 1.シリカ析出実験の生成物の解析:超臨界流通式実験装置によってシリカ析出実験を行なっている。この生成物は、アモルファスシリカ、クリスとバライト、石英へと系統的に変化する。この生成物について、カソードルミネッセンス、FE-EPMA、EBSEDなどによって、どのようにシリカ粒子が生成したのかの詳細を明らかにする(ユトレヒト大学)。また、石英の多結晶体成長組織について、形態とEBSD解析を行う。 2. 蛇紋岩とその脱水組織:三波川変成帯に存在しるマントルウェッジ起源の蛇紋岩には脱水過程による2次かんらん石が存在する。この結晶方位解析を進めるともに、ナノポア組織をX線CTなどを用いて解析する。さらに、同様の蛇紋岩を実験によって脱水させた組織を比較検討する(東北大学、ユトレヒト大学)。さらに、オマーンでの蛇紋岩のメッシュ組織形成に伴うナノ空隙の解析を行う(東北大学)。 3.変成岩の置換組織:高温変成岩の流体が関与した置換組織の解析を進める。また、玄武岩ー海水実験などでできた置換組織についても、そのナノ構造解析を進める。
|