これまで実施した基課題研究(若手研究B「津波による堆積・侵食過程の時系列解析:水理条件の復元に向けた水路実験」,課題番号16K17817)によって,津波堆積物の特徴が,地形条件や水理条件に依存した時系列堆積侵食過程から大きく影響を受ける可能性が明らかになった.本研究課題では,こうした時系列堆積侵食過程の影響について,定性的な理解を発展させ,現象のメカニズムの解明と定量的なモデルの構築を目指し,堆積過程の物理メカニズム研究に精通した英国Hull大学の研究者と連携して共同研究を実施する. 令和4年度は前年度までに検討した実験方法と解析について実際に試行した.実験では津波を模した段波によって輸送される堆積物を下流側で採取し,乾燥重量を測定した.得られた実際の堆積物量は,測定された流速の時系列データから堆積物輸送モデルによって推算される量との比較を行った.実験で得られた実際の堆積物輸送量の総量については,堆積物輸送モデルの比較の結果,初期水深による明確な違いは見られなかった.このことから,初期水深は,堆積物巻き上げ開始のタイミングなどプロセスには影響する可能性があるが,堆積物輸送総量に対しては大きな影響を及ぼさない可能性が示唆された.ただし,実験条件が限られていることから,その一般性については今後検討が必要である.また,Hull大学の研究者とは定期的にオンラインで検討を進めており,東部ヨークシャー州における津波堆積物調査について共同で検討を進めている.この成果については2023年の学会において報告が予定されている.
|