これまで実施した基課題研究(若手研究B「津波による堆積・侵食過程の時系列解析:水理条件の復元に向けた水路実験」,課題番号16K17817)によって,津波堆積物の特徴が,地形条件や水理条件に依存した時系列堆積侵食過程から大きく影響を受ける可能性が明らかになった.本研究課題では,こうした時系列堆積侵食過程の影響について,定性的な理解を発展させ,現象のメカニズムの解明と定量的なモデルの構築を目指し,堆積過程の物理メカニズム研究に精通した英国 Hull大学の研究者と連携して共同研究を実施する. 令和5年度は,前年度までに行った実験と解析をふまえ,津波を想定した流れによる堆積物輸送量の検討に向けた追加実験を実施した.実験では,Hull大学のグループが発表した混濁流の堆積物輸送ポテンシャルについての研究をふまえ,津波を想定した流れが陸上河川流や海底の混濁流と比較した場合にどのような特徴を持つかに特に注目して実験を行った. 滞在時に議論を進めていた,堆積物輸送における流れの非定常性と粒径依存性についての実験データ解析をまとめ,国際学術誌に投稿した. Hull大学の研究者と検討を進めていた東部ヨークシャー州における津波堆積物調査の予察的な結果をJpGU 2023において発表した.この研究の担当者であるHull大学のBen Pickett氏と,2011年東北沖津波の際に津波の被害を受けた仙台平野および石巻周辺地域を現地視察し,特に地形の違いが津波堆積物におよぼす可能性についての議論を行った.また,PickettがJpGU2023後に滞在した京都大学においても議論を行った.
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