研究課題/領域番号 |
18KK0380
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
北山 貴裕 東京大学, 大学院数理科学研究科, 准教授 (10700057)
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研究期間 (年度) |
2019 – 2021
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キーワード | 3次元多様体 / 位相不変量 / 表現 |
研究実績の概要 |
高次元線形表現の空間の幾何学を低次元トポロジーに応用する研究の展開と育成を図ることを目的として、基本群の線形表現の空間とその上の関数を与えるトーション不変量の情報から、3次元多様体を本質的に分解する部分曲面の分布の様子と複雑さを究明することに取り組んだ。 FriedlとLueckによって、関数解析的な多項式型のトーション不変量であるL^2-Alexanderトーションが導入された。Stefan Friedl氏との共同研究において,我々はある群のクラスに対してL^2-Alexanderトーションの次数はある線形表現に付随するトーション不変量によって1次コホモロジー類に関して一様に捉えられることを示した。特別な場合として、ねじれAlexander多項式がThurstonノルムを捉えることを示したFriedl、Nagel、Vidussiによる先行結果をより強い形に置き換えた。 最近、二つの結び目の間の特別なコンコーダンスであるホモトピーリボンコンコーダンスと呼ばれる概念についての研究が進んでいる。Stefan Friedl氏、Lukas Lewark氏、Matthias Nagel氏、Mark Powell氏との共同研究において、我々はホモトピーリボンコンコーダンスが存在するためのねじれAlexander多項式に関する障害を与えた。これは、古典的なAlexander多項式に関するFriedlとPowellの先行結果の一般化である。応用として、我々はSeifert形式では捉えられないホモトピーリボンコンコーダント関係上の差異が存在する結び目の無限族を構成した。 また、レーゲンスブルク大学で開催されたLow-Dimensional Topology Workshop及びGlobal Analysis Seminarにおいて講演し、当該分野における今後の国際的連携の基盤構築に繋がる学術交流を深めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
特にトーション不変量に関して、関数解析的な不変量と有限次元表現に付随する不変量とを関係付けることでThurstonノルムを捉える共同研究と新たな展開として不変量を4次元トポロジーに応用する共同研究が進展した。また、後者の研究に関連してAlexander加群上のBlanchfield形式に関する共同研究も今後の進展が期待される。このため、これまでの進捗は順調であるといえる。 一方で、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により,Stefan Friedl氏と共同開催を計画していた国際研究集会を延期または中止とせざるを得ない状況である。また、予定していた研究打ち合わせ及び招待講演のための国内外の出張を延期または中止としている。このように、次年度以降の研究活動に制限が生じることが見込まれる。
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今後の研究の推進方策 |
トーション不変量を用いてThurstonノルムを捉える研究を更に進める。また、A多様体の情報から本質的曲面の境界スロープを捉える研究を行う。本年度に引き続き、ドイツのレーゲンスブルク大学に研究滞在し、Stefan Friedl氏と集中的な共同研究を行う。帰国後もFriedl氏と連絡を密にし、本研究の観点から、表現を高次元化したことで現れる数理に着眼する基課題への寄与について整理する。また、本研究のテーマに基づいた(オンライン)セミナーを企画し、研究領域の育成・発展を図る。これまでに得られた成果を講演等により積極的に発信することを心掛け、研究を更に深める。
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