高次元線形表現の空間の幾何学を低次元トポロジーに応用する研究の展開と育成を図ることを目的として、基本群の線形表現の空間とその上の関数を与えるトーション不変量の情報から、3次元多様体を本質的に分解する部分曲面の分布の様子と複雑さを究明することに取り組んだ。また、新たな展開として、基本群の表現に付随する不変量の4次元トポロジーへの応用研究と数論的トポロジーの観点からの研究を進展させた。 最終年度は、森下昌紀氏、丹下稜斗氏、寺嶋郁二氏との共同研究において、まず、数論における随伴Selmer加群の双対のトポロジーにおける類似として、結び目群のSL_2-表現の普遍変形に対する随伴ホモロジーSelmer加群を導入した。次に、この随伴ホモロジーSelmer加群が有限生成トーション加群であることを示し、代数的p進L関数の類似である当加群のFittingイデアルについて、幾つかの計算例を提示した。また、指標多様体の幾何学の3次元多様体のトポロジーへの応用についての解説記事をまとめた。 研究期間全体を通じて、特に、ある群のクラスに対してL^2-Alexanderトーションの次数がトーション不変量によって捉えられることを示し、ホモトピーリボンコンコーダンスが存在するための結び目のねじれAlexander多項式に関する障害を与えた。更に、結び目のGordian距離のねじれBlanchfield形式による下からの評価を与え、結び目の位相的整4次元種数をBlanchfield形式の言葉で記述するFellerとLewarkの定理により直接的な別証明を与えた。また、Thurstonノルムの研究に関するサーベイ論文を執筆した。レーゲンスブルク大学で開催された研究集会やセミナーにおいて講演を重ね、当該分野における今後の国際的連携の基盤構築に繋がる学術交流を深めることができた。
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