研究課題/領域番号 |
18KK0386
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
眞崎 聡 大阪大学, 基礎工学研究科, 准教授 (20580492)
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研究期間 (年度) |
2019 – 2021
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キーワード | 分散型方程式 / 非線形散乱問題 / 非線形シュレディンガー方程式 / 定在波解 / 遷移現象 / 散乱理論 / 可積分系 / 定在波解の安定性解析 |
研究実績の概要 |
本年度は、当初予定していた可積分系の観点からの遷移現象の解析の面では大きな進展は得られなかった。研究環境の大きな変化により、当該研究の遂行には大きな支障がでている状態である。また、安定性理論の研究においては、デルタポテンシャルをもつ非線形シュレディンガー方程式を考え、小さくない定在波解のまわりでの線形化作用素のスペクトルの理解を目指して研究を行った。数値計算を援用することにより、いくつかの興味深い知見が得られた。論文としてまとめ、現在投稿している段階である。 関連分野である長距離散乱理論の研究においては、予想を超えた大きな進展が得られた。方程式系は、単独方程式に比べて方程式として複雑であるので、単独方程式では見られない解の振る舞いがあり得ることが期待される。実際に、そのことを示唆する例がいくつか知られていた。しかし、これまではそのような特殊な具体例を個別に調べるのが主であり、それらの全体像の把握、つまり方程式系のもつ振る舞いがどれくらいあり得るかについては、ほとんど理解されていなかった。ここでは、方程式系の標準化の理論の構築に成功した。これは、システムを解の振る舞いによって分類することができるもので、方程式系の解の振る舞いの全体像の把握における有力な方法となると予想される。実際に、この標準化理論によって、特定の範囲にある非線形クラインゴルドン方程式系の解を完全に分類することができ、それによりこれまでに知られていなかった新しい方程式系を複数見つけることができた。この結果は、現在投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
ロサンゼルスに滞在し、国際共同研究により研究を進める予定であったが、COVID19により滞在の中断をせざるを得なかった。その後の状況もよくならず、今年度中に再度滞在することも叶わなかった。オンラインによる打ち合わせという代替手段はあったが、時差でお互いの就業時間が重ならないため、長期間定期的に続けるのは負担が大きく困難なことが判明した。このような事情により、本研究課題の根幹をなしている国際共同研究の部分は、非常に大きな制限を受ける状況となり、当初の期待通りに進んでいない。 結果的に、国際共同研究による部分の少ない研究に注力することとなり、そちらでは想定を超えた大きな成果が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
現在の状況では、次年度中に共同研究者のいるロサンゼルスおよびミズーリ州ローラへの滞在が可能かは見通せない。可能な状況になれば滞在を行うことを強く希望しているが、次年度中も滞在できない状況が続くようであれば、研究機関の延期あるいは研究の中断を決断せざるを得ない状況である。 当面は、国際共同研究の実行が困難な状況下でも成果が期待できる研究に注力する。それは、具体的には昨年度得られた方程式系の分類理論の発展である。長距離散乱理論において構築した理論だが、多方面に応用が期待できる理論である。並行して状況を注視し、もし状況の改善が見られた場合、可能な限り早い段階での滞在を行い、国際共同研究に依存する研究も進める。
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