研究課題/領域番号 |
18KK0387
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
蓑輪 陽介 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (50609691)
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研究期間 (年度) |
2019 – 2021
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キーワード | イオントラップ / 光トラップ / オプトメカニクス |
研究実績の概要 |
英国ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのPeter Barker教授のもとで滞在研究を行い、その実施成果を大阪大学に導入し、実験系を実際に構築した。現地でのPeter Barker教授との議論を踏まえ、本研究を以下の3つのプロジェクトに分割し、最後に統合するという方向で進めることとした。1. ナノメートルあるいはマイクロメートルサイズの微小球を、光によって捕捉・浮遊させるための実験系の構築。2. 帯電したナノメートルあるいはマイクロメートルサイズの微小球を、直流・交流電場によって捕捉・浮遊させるための実験系の構築。3. 捕捉・浮遊した状態のナノメートルあるいはマイクロメートルサイズの微小球の運動状態を測定するため実験系の構築。1に関しては、主に英国滞在中に実験を行った。実験に必要なレーザー光源の作製を行い、所望する性質を満たしていることを確認、実際に大気圧下で、マイクロメートルサイズの微小球を光によって捕捉・浮遊させることに成功した。2と3に関しては、英国滞在中の実験・議論をベースとして、その後も遠隔で議論を行いつつ、主に大阪大学で実験を行った。実際に、ナノメートルサイズの微小球を帯電させるための手法を確立し、帯電したナノメートルサイズの微小球を、直流・交流電場によって大気圧および真空中で捕捉・浮遊できることを実証した。また、捕捉・浮遊した微小球の運動状態を測定するための原理検証実験に着手した。リアルタイムに位置を測定するために有効な手法を確認し・実証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ナノメートルサイズの微小球を帯電させるための手法を開発し、帯電したナノメートルサイズの微小球を、直流・交流電場によって大気圧および真空中で捕捉・浮遊できることを実証できたのは大きな進展であった。今後は、予め狙ったサイズの微小球を効率的に捕捉するための手法開発など、この実験系を改良・発展させていく必要がある。同様に、光によってマイクロメートルサイズの微小球を捕捉・浮遊できることを実証できたことも大きな進展であった。しかし、こちらについては大気圧下での捕捉・浮遊のみが成功し、真空での実験には課題が見つかった。マイクロメートルサイズの微小球と、照射する光との共鳴的な相互作用に起因して、捕捉した微小球の運動が不安定化する可能性がわかったためである。したがって、この課題解決のために、マイクロメートルサイズの微小球と光との相互作用を詳細に研究する必要がある。また、捕捉・浮遊した状態にある微小球の運動状態を測定するための手法開発に着手し、一定の目安がついた。この手法開発については、まだまだ原理検証の段階にあり、継続的に研究の必要がある。 さらに、英国ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのPeter Barker教授グループに長期滞在研究を行い、密接にコミュニケーションを取ることで、今後の共同研究に必要な信頼の基盤をつくることができたことも大きな成果であった。一方で、電子メールを通じた遠隔での議論には課題も見られたことから、ビデオ通話など代替手段の採用を検討している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究で、捕捉・浮遊したマイクロメートルサイズの微小球と、照射する光との共鳴的な相互作用が、微小球の運動を不安定化する可能性が明らかになった。そこで、この相互作用の詳細を明らかにすることを目指す。まず、狭線幅かつ波長可変なレーザーを用いて、波長掃引しながらマイクロメートルサイズの微小球に光照射することで、光散乱を通じて共鳴構造を明らかにする。次に、共鳴光照射下および非共鳴光照射下での微小球の振動状態や、重心運動状態の違いを観察することで、共鳴光が微小球におよぼす効果について詳細に調べる。共鳴効果を防ぐために、広帯域光源の利用などを検討する。共鳴効果の影響を抑制することができれば、真空下において、光によってマイクロメートルサイズの微小球を捕捉・浮遊する実験をすすめる。 また、捕捉・浮遊した状態にある微小球の重心運動の状態を測定するための手法開発を行う。リアルタイム性と精度および改造の容易さを両立するために、プログラマブルなシステムの構築を目指す。特に汎用のCMOSカメラからの信号を高速に処理し、位置検出を行う手法を実装する。この手法は、英国ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのPeter Barker教授グループが開発した手法を、大幅に改良し、別のシステムへと移植することで達成される。 その後、これらの技術を統合し、光と電場両方の効果で微粒子の捕捉・浮遊を行う系を実装する。そして、微粒子の運動状態を測定・その結果をフィードバックすることで微粒子の重心運動の冷却を実現する。
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