研究課題/領域番号 |
18KK0387
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
蓑輪 陽介 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (50609691)
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研究期間 (年度) |
2019 – 2022
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キーワード | Paul trap / 微粒子 / フィードバック冷却 |
研究実績の概要 |
英国ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのピーター・バーカー教授のもとでの滞在研究の結果を踏まえ、リモートで議論を行いつつ、昨年度に引き続き、以下の3つの方向での研究を行った。 1. 帯電したナノ・あるいはマイクロメートルサイズの微小球を、直流・交流電場によって真空中に捕捉・浮遊させる。 2. 捕捉・浮遊した状態の微小球の重心運動の運動状態を測定する。 3. 微小球の運動エネルギーを減らすべく、電場にフィードバックし、運動の冷却を行う。 1および2に関しては、前年度までに一定の結果を得ており、特に微粒子の高真空中での捕捉・浮遊に成功している。また、微小球の重心運動についてCMOSカメラとマイクロコントローラを用いて測定可能であることを実証した。そこで、今年度は主に3の点について研究を進めた。まず、測定した微小球の重心座標をもとに、フィードバックに用いるために、速度に比例した電気信号を発生させる。ここでは、座標に対応する信号を微分するのではなく、90度位相を遅らせることで速度に対応する信号を得ることとした。ノイズの混入を防ぐために、デジタル信号処理によって位相遅延を実装した。さらに、フィードバックゲインの調節のために、減衰器を導入した。微小球の重心運動のエネルギーを測定しつつ、これらの位相およびフィードバックゲインを変化させることで、最適な実験パラメータを決定した。その結果、重心運動の運動エネルギーをおよそ2桁冷却することに成功した。現在、さらなる詳細の研究を進め、論文として報告予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
新型コロナCOVID-19の感染状況悪化のために、計画していた渡英を延期せざるを得なくなったものの、リモート会議ツールなどを駆使することで、共同研究者である英国ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのPeter Barker教授と密なコミュニケーションは取ることができている。 研究をすすめる上で、当初予定した冷却手法とは全く異なるものの、重心運動が冷却可能であることを見出し、その実証にこぎつけることができた。光学系や真空排気系を改善することで、運動エネルギーの2桁の冷却に成功した。現在、この結果を論文としてまとめて公表予定であり、当初の計画以上に進展していると評価できる。 また、マイクロメートルサイズの微小球の共鳴構造について実験的に測定することに成功している。その過程で、共鳴的光照射と微小球の機械的振動との関係も明らかになりつつある。 さらに、本研究の基盤技術となる、微小球の光トラップ技術を極低温環境下で世界で初めて実証した成果についても論文として報告している。
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今後の研究の推進方策 |
帯電した微小球を、直流・交流電場によって真空中に捕捉・浮遊させ、その重心運動を冷却する実験については、引き続き詳細なパラメータの最適化を行い論文化を目指す。また、真空度に応じた冷却の効率などの詳細を明らかにする。 さらに、マイクロメートルサイズの微小球の光共鳴を利用して、微小球の機械振動(弾性振動や重心運動など)を制御する研究も引き続き遂行する。特に、昨年度までには、単一のサイズの微小球についてしか実験を行えていないため、多様なサイズの微小球について実験を行い、系統的な評価を行う予定である。
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