研究課題/領域番号 |
18KK0388
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
冨樫 祐一 広島大学, 統合生命科学研究科(理), 准教授 (50456919)
|
研究期間 (年度) |
2019 – 2021
|
キーワード | 生物物理学 / 生体高分子 / 分子複合体 / 構造機能相関 / 分子動力学 / 反応拡散系 / 数理モデル / シミュレーション |
研究実績の概要 |
タンパクなど生体高分子の構造変化は、複数の分子(例えば酵素と基質)間での結合・反応にも影響する。逆に、分子の結合・反応により分子構造が変化する場合もある。このような場合、構造変化と分子の結合・反応とが相互に干渉しあうことになる。本研究では、旧来の反応拡散系研究では無視されていた分子構造あるいは形の問題に取り組み、形の変化する生体高分子の間での化学反応や情報伝達に対する理論を得ることを目的としている。この目的に向け、当初計画では抽象的なモデルに主眼を置いていたが、その後の(基課題等での)研究の進展から、まずは具体的な対象を想定して研究を開始することとした。 初年度はまず、核内クロマチン構造を対象に、これまで研究代表者や共同研究者が研究を進めてきた粗視的な高分子モデルの拡張と、その基礎データを得るためのより微視的なモデルの構築・評価に取り組んだ。交付申請書に記載した通り、滞在を複数回に分割した。その第1回となる2019年11月の渡航の際に、共同研究者ほか渡航先機関の研究者と議論を進め、DNAの物性に関する数理モデル構築と分子動力学計算を用いた評価を新たに開始した。以後、テレビ会議等で連絡を取りつつシミュレーションによる検討を進めている。あわせて、DNAの修飾や複合体形成に関連して、分子動力学計算を用いた力学特性評価も進めた。この成果の一部について、現在論文執筆中である。 第2回の渡航時(日程未定・後述)に、これらの結果を組み合わせ、新たな数理モデルの構築に向けた検討を進める予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2019年11月の渡航とその前後の日本での研究は順調に進んだ。しかし、2020年3~5月に予定していた渡航がCOVID-19の影響により延期となったため、2019年度末時点で計画よりやや遅れている状況にある。本報告書作成時点でも代替日程が決定できておらず、今後の情勢によっては事業期間延長を必要とする大幅な遅れになる可能性があるため、遅れを最小限にすべく日本国内で実施可能な研究を進めている。
|
今後の研究の推進方策 |
COVID-19の影響により、今後の渡航計画が確定できない状況であり、共同研究者側でも自宅待機となるなど研究に支障が生じている。幸い、2019年11月の渡航時に十分な打合せの上で研究を開始できたため、現在もテレビ会議等で連絡を取りつつ、実施可能な内容から研究を進めている。次回渡航可能となるまで、この体制で共同研究を続ける。渡航先からの学生指導のために前年度に導入した装置等を活用して、共同研究先の大学院生との議論を再開するなど、追加の方策を採る予定である。
|