研究課題
本研究では、旧来の反応拡散系研究では無視されていた分子構造あるいは形の問題に取り組み、形の変化する生体高分子の間での化学反応や情報伝達に対する理論を得ることを目的としている。新型コロナウイルス感染症の影響で渡航延期が続いたため、オンラインで連絡を取りつつ、日本側・英国側それぞれで、DNAの物性に関する数理モデル構築と分子動力学計算を用いた評価を進めてきた。本年度に入り再渡航が可能となったが、予定の大幅な再調整が必要となったため、まずは短期の渡航で、これまでの成果の論文執筆準備と今後の計画策定のための議論を集中的に行った。具体的には、周期境界条件下での高分子粗視化モデルの数理的考察を進めたほか、DNAの修飾による力学特性への影響などを分子動力学計算を用いて評価した。これらについて2報の論文を準備中である。加えて、日本側単独で研究を進めることが可能な関連項目として、前年度に引き続き、リボソーム内でのmRNA-tRNA間相互作用と翻訳開始機構との関係について分子動力学計算を用いた解析を進めた。特に、修飾塩基を含むmRNAとの相互作用を評価した。これについては、論文1報が出版され、新たに1報を準備中である。このテーマに関連する米国の実験グループを交えた3者間で、新たな国際共同研究プロジェクトの企画にも進展した。次回渡航(2023年4~5月)の際に、論文執筆と新たな数理モデルやシミュレーション手法の検討を進める予定である。
4: 遅れている
2020年3月以降に予定していた渡航が新型コロナウイルス感染症の影響により延期となり、再渡航が2022年9月まで遅れたため、研究の進捗に大幅な支障を来した。一方で、その間も海外共同研究者とオンラインで連絡を取りつつ日本国内で可能な研究を進めたこと、研究目的に沿った範囲で日本側単独で進めることができる研究内容を展開したことで、すでにいくつかの論文を出版するなど、一定の成果は得られている。
新型コロナウイルス感染症の影響により渡航計画の再調整が必要になり、渡航期間の短縮は避けがたい状況ではあるが、研究目的を大幅に変えない範囲で国内の計算機利用を追加するなど計画を組み換えることで成果自体は得られつつある。直ちに長期間続けて渡航することは難しいため、当初計画よりさらに短期間に分割することで可能な限り時期を早める方針である。時間が限られていることから、事前に国内で得た結果を持ち込んで集中的に議論を進める。
すべて 2022 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (7件) (うち招待講演 1件) 備考 (2件)
Science Advances
巻: 8 ページ: eabm8501
10.1126/sciadv.abm8501
Biophysics and Physicobiology
巻: 19 ページ: e190027
10.2142/biophysico.bppb-v19.0027
https://www.togashi.tv/lab/
https://researchmap.jp/togashi